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□サシャの風
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サシャ死後
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壁のなくなった世界は広くて果てしなかった。
花が一面に咲く野原。
風が吹くと同時に、野原の花も揺れる。
頬を誰かに撫でられたような気がした。
昔サシャにこんな事を聞いた。
『なあ、お前は死んだら何になりたい...?』
我ながらおかしな質問だと思う。
『んー、死んだらですか......そうですね、私は風になりたいです』
『風ねぇ....』
『はい!だって、風は自由でどこまでも行けるんですよ...!!』
『はは、お前らしいな』
俺は何故か嬉しかった。
風。
サシャがここで死んで、本当に風になったのかもしれない。
根拠はない。
でも、そんな気がした。
また、風が吹く。
さっきよりも強い風。
そして、また誰かが俺の頬を触った気がした。
サシャは死ぬ間際まで、笑って死んでいった。
それを見ることしか出来なかった自分が悔しい。
自分もあんな風に死ぬときは笑えるのだろうか。
そして、
自分もいつか風になれるのだろうか。
−私は風です
自由な風−
『ずっと貴方の側にいます』
end