short1

□サシャの風
1ページ/1ページ

サシャ死後
----------------------


壁のなくなった世界は広くて果てしなかった。


花が一面に咲く野原。


風が吹くと同時に、野原の花も揺れる。


頬を誰かに撫でられたような気がした。






昔サシャにこんな事を聞いた。

『なあ、お前は死んだら何になりたい...?』

我ながらおかしな質問だと思う。

『んー、死んだらですか......そうですね、私は風になりたいです』

『風ねぇ....』

『はい!だって、風は自由でどこまでも行けるんですよ...!!』

『はは、お前らしいな』

俺は何故か嬉しかった。






風。



サシャがここで死んで、本当に風になったのかもしれない。



根拠はない。



でも、そんな気がした。


また、風が吹く。


さっきよりも強い風。


そして、また誰かが俺の頬を触った気がした。





サシャは死ぬ間際まで、笑って死んでいった。


それを見ることしか出来なかった自分が悔しい。






自分もあんな風に死ぬときは笑えるのだろうか。


そして、


自分もいつか風になれるのだろうか。





−私は風です
自由な風−


『ずっと貴方の側にいます』


end

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ