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□永遠の
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※永遠の0見て書きたくなりました。
無駄に長いです。
永遠の0ネタバレっぽいです。
ジャンは宮部さんポジです。
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東から昇る朝日が少しずつ辺りを照らす。
『絶対、絶対生きて帰ってきてくださいね』
「当たり前だっての。例え腕がなくなっても、足がなくなっても、死んでも......生まれ変わっても.....必ず会いに来る」
『約束ですよ.....?』
「ああ.....シャロンを頼んだぞ」
私の背中ですやすや寝ている赤ん坊のシャロンの頭を優しく撫でると、こちらを一度も振り向かずに、壁外調査に行ってしまいました。
壁外調査が終わってもジャンは帰って来なかった。
覚悟はしていました。彼が兵士になった時からそんなことは。
死んだ兵士の妻は兵団の寮から出ていかなければならない。お金もない、家もなくなった。シャロンを連れ、物置のような家に今は住んでいる。
ある日、ボロボロの戸が勢いよく開いた。振り向くと一瞬ジャンが帰ってきたのだと目を見開いたが、よく見るとそこにいたのは久しぶりに見たコニー。サシャとジャンが結婚して、育児のために兵士を辞めて以来会うコニーは、背もジャンほどで成長していた。
大人の顔つきになったコニーは唇を噛み締め、床に膝まついた。
「......サシャすまん!!ジャンは、ジャンは俺の身代わりになって....!」
そこから先の言葉など言われなくともわかった。
「俺が....俺が死ねばよかったんだ....ジャンが死ぬ必要なんかなかったっ.....!!」
『そんなこと言わないでください。覚悟はしていました』
無理に笑っているのが自分でもわかった。頬を伝う涙が証拠だ。
「っ.....コレ、ジャンの遺書」
震えながら渡してきたコニーの手。コニーも泣いていた。
黙って遺書を受け取った。
震える手で封を開けて、涙を拭き取り読み見始めた。
けど、そこにはたった四行ほどの遺書。いかにもジャンらしい。余白ばかりではないか。
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お前がこれを読んでるときには俺は死んでるんだろうな。
遺書はきっとコニーが届けに来てくれてるはずだ。俺が頼んだからな。
コニーにお願いがある。俺の家族が路頭に迷っていたら、助けて欲しい。
サシャとシャロンを頼む。
ジャン・キルシュタイン
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余りにも短すぎる遺書。しかも、サシャにではなくコニーに向けて書かれていた。
サシャは腹の奥底から沸き上がる苦しくて辛い感情に負け、遺書をコニー押し付けて大声で叫んだ。
『帰って!!帰って下さい....!!!!』
「サシャ...!おい....!」
涙でコニーの顔もまともに見えなかった。無我夢中でコニーを外に追い出して、勢いよく玄関を閉めた。
『あ、ぁぁ"あぁ"ぁぁあ"あ"あ"ああ"っ......!!!!!!』
玄関を背に倒れ込んで、大声で泣いた。
ただただ泣いた。大声で叫んで泣いた。
「ママ.....?」
奥の部屋で遊んでいたシャロンが出てきた。サシャはジャンに似のシャロンをきつく抱き締めた。
現実になってしまった。コニーが来た時点で本当にジャンが死んでしまったことが。覚悟していたが、結局それを受け入れることが出来なかった。遺書の内容が何より悲しかった。
玄関の外までサシャの泣き声は聞こえた。コニーは押し付けられた、遺書を読んだ。
「ジャン、お前は本当に馬鹿だよっ.....大馬鹿だっ.....」
それから、サシャに追い出されてもコニーは毎日のように家に通った。どんなに追い出されても、拒否されても通った。
それが、"義務"だと思ったから。
「あっ!!おにいちゃんだ!」
これだけ通っているとシャロンにも顔を覚えられ、コニーを見つけると駆け寄っていく。
サシャも少しずつ気持ちが前を向き、3人で散歩に行ったり、遊んだりした。
『狭くてすいません』
「いや....そんなことねぇよ......」
お茶を一口飲んで、部屋を見渡す。あの日以来初めて家に上がった。
良い生活とは正直言えない。サシャとシャロンがこんな生活をしていることが自分も苦痛でしかたがなかった。
『シャロン....ちょっと外で遊んでき.....』
「はーい!!」
勢いよくシャロンは外に出ていった。
出ていったのを確認すると、話を切り出したのはサシャだった。
『こうやって話をするのは久しぶりですね.....』
「そうだな.....」
沈黙。コニーはこういう空気が苦手だ。そして、沈黙やぶる。
「あの時さ、壊滅的だったんだ。仲間が皆死んでった。数えきれないほどの巨人に殺された。」
『......』
「壁外調査に行く前ジャンは言ってた。仲間の死で生きている自分が悔しいって.....辛いって.....あいつらしくないだろ?けど、そうやってだんだんおかしくなって行く奴は他にもいたよ。仲間の死を目の前見して平気でいられるやつなんていないからな......」
一口お茶を飲む。
「........ジャンは足を食われて地面に倒れてた。まだ、息があったから助けようとしたんだ俺.....けど、俺は巨人に捕まった。もう、死ぬんだと思った。けど、巨人の手が緩くなって、地面に落ちたとき見たんだ。ジャンは足も無いのに最後の力を振り絞って、巨人の項を削いだ。」
「まだ息があったから、ジャンを馬に乗せて逃げたよ。けど、ジャンを支えながらだとスピードは出なくて、巨人に捕まりそうになった時、ジャンは自ら馬から落ちた」
『っ.....』
「その時、ジャンは笑ってたよ。けど、止まった俺にジャンは『早く行け!』って言ってた.....でも、俺はジャンを助けようとしたよ。そしたら『お願いだ....サシャを頼む!!』泣きながら言ってた.....俺はそこでジャンを見捨ててっ.....帰ってきたんだ.....。」
『............それが、ジャンの運命だったんだと思います』
「..........!!」
『...........』
「.........あいつさ、休憩時間とか毎日俺にサシャとシャロンの写真見してきて自慢すんだ......ジャンが羨ましかった。こんな綺麗な嫁さんもらって」
『っ.........!』
「でも、結婚する前、ジャンといる時のお前の笑顔は俺には作り出せない。そう思ったから、お前に俺の想いは告げなかった.......ジャンからお前を奪おうって思わなかった....けど、俺、訓練兵の時からお前のこと.......」
『待ってください』
サシャが今にも泣きそうな顔だった。けど、真っ直ぐな目で俺を見ていた。
『私最近気づいたんです.....ジャンが言ってた意味を.....』
「.......?」
『あの人はっ....壁外調査に行く前言ってました、例え腕がなくなっても、足がなくなっても、死んでも......."生まれ変わっても"会いに来るって......!』
「サシャ.....」
『きっとその生まれ変わりが、コニーなんですね.........ぅ、うぁっ.........』
泣き出すサシャをコニーは抱き締めた。
「ジャンはきっと、自分が死ぬことよりも家族の生活が壊れちまうのが怖かったんだと思う......」
『コニー.......』
「これからは、俺が守るから....あいつの分まで.....」
『うぅ.....今度は絶対生きて帰ってきてくださいね.....』
「当たり前だ......」
それからコニーとサシャは再婚し、キルシュタインからスプリンガーに姓を変え、サシャ・スプリンガーとなった。
50年後ー春ー
サシャは病室で息を引きとった。
顔は今まで生きた証であるしわ。綺麗な赤毛も白くなった。
コニーはいくつもの壁外調査でも必ず生きて帰ってきた。サシャが死ぬまで守ることがジャンへの報いだと思っていたから。
すると急に、静かな病室にヒューと、春の風が窓から入ってきた。同時にコニーは目を見開いた。
「ジャン......」
そこに居たのは、あの頃の兵団服を着ているジャンだった。
ジャンはコニーと目が合うと少し申し訳なさそうに微笑んだ。
そして、サシャの手を優しく握った。
「サシャ、迎え遅くなっちまったな......」
すると、死んだはずのサシャが目を開いた。
『....どんだけ待ったと思ったんですか、馬鹿っ』
幻なのだろうか。コニーは瞬きをするとあの若い頃のジャンとサシャが。
「コニー今までサシャが世話になったな。お前に託して正解だったよ.....お前のおかげだ.....ありがとな」
「ははっ....こちらこそ、ありがとな」
そう言うと二人は笑って、左胸に拳を作り、心臓を捧げる。
コニーも泣きながら心臓を捧げる。
二人は窓から差し込まれた太陽の光に消えていった。
ふと、ベッドで静かに眠っているサシャの顔を見ると少し笑っている。今まで見た中で一番幸せそうだった。
「義父さん....」
いつの間に入ってきたのだろうか。すっかり大人になった息子はジャンと瓜二つ。シャロンも泣いていた。
「きっと母さんは、父さんに会えたんだろうね....」
「ああ、そうだな........」
二人は声を押し殺して泣いた。
私の命日にジャンは迎えに来てくれました。
『やはり、ジャンはちゃんと約束守ってくれますね』
「言っただろ。死んでも必ず会いに来るって....」
『そうですね.....』
でも叶うなら.......
もう一度、生きてジャンに会いたかったです
end.
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