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□LOVE CIRCULATION
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ジャン「ただいまー」

サシャ「ジャン!おかえりなさい!」

築40年。
台所、トイレあり、風呂なし。
そんな古く安いボロアパートに住むカップルがいる。

ジャン「サシャ飯ー」

サシャ「はーい。ちょっと待っててください」

二人は大学の同期で知り合い、付き合っていた。
卒業後、二人で上京し、同じ会社に就職できたと思ったら、その会社の景気が悪くなり、新卒である二人は会社をクビにされた。
そして、今二人揃って就職浪人生。

親にも友達にも内緒で、お金の無い二人でアルバイトをしながら、ボロアパートで同棲している。

サシャ「余り物で作ったハンバーグです。味はどうですか?」

ジャン「すっげぇうめぇ....!本当に余り物かよ....!!」

サシャ「ええ。本当にw」

ジャン「バイトで生活し始めてから、ハンバーグなんて久しぶりに食ったな....」

サシャ「いつも貧相ですいませんね...」

ジャん「そういう意味じゃなくて!でも、サシャの作った料理だったら、なんでも美味いし」

サシャ「そんな褒めたって何にも出ませんよ?」

ジャン「う.....でも、ここに住んで、毎日サシャと話して、飯食って、たまにセックスして....今すげー幸せなんだ。新婚みたいでさ」

サシャ「・・・私も幸せです―」

でも、正直。
今の暮らしが不安で仕方がない。

バイトクビにされたら?
今更、親のところになんて戻れない。

本当にこのままで―いいんでしょうか・・・




ジャン「明日俺バイト早いから、寝るわ」

サシャ「あ、おやすみなさい」

ジャン「おやすみー」

台所で1人、汚れたお皿を洗う。
もう、11時。
最近、ジャンの帰りが遅い。
それは、少しでもお金を稼ぐ為。
わかってるのに、寂しいって思ってしまう。

こんな時に思い出すのは、田舎にある家を出たときとの家族との会話。

――――――
――――
――

父「サシャ!ちゃんとこまめに連絡よこすんだぞ!」

サシャ「もう、わかってるってゆーとるやろ!」

母「まぁまぁ。サシャは今日から社会人やし、大丈夫。」

父「いや、しかし....」

母「ま、もし行き先のアパートで誰かと同棲でもする相手がいるようなら、ちゃんと紹介しなさい」

サシャ「う、うん....」

――
―――――
―――――――――

サシャ(あの時はまだ、こんな生活するなんて想像もつかなかったです....)

もう、限界・・・?





ジャン「ただいまー」

サシャ「あ、おかえりなさい!今日は早いんですね!」

ジャン「ああ。予定より早く終わったからな。あ、飯食う」

サシャ「はい。今日はお魚です」

ジャン「おー、美味そう....いただきます!」

サシャ「どうぞ」


今日はジャンが予定より早く帰って来てくれたおかげで、ジャンとの時間が増えた。

ジャン「なぁーサシャ」

サシャ「なんです?」

一つの布団に二人で寝そべっている。

ジャン「いい?」

サシャ「何がですか?」

ジャン「何って....ナニだろ」

サシャ「ダメです」

ジャン「えー、サシャは明日昼からバイトだろ?」

サシャ「そうですけど...次の就職の勉強したいですし....というか、ジャンも午前中AOT社の面接入ってるって言ったじゃないですか」

ジャン「え、そうだったけ?」

サシャ「え....」

ジャン「ま、なんとかなるだろ。若いし、勉強もそこそこできるからいけ ―ばちんっ!!!

ジャン「いっ――!」

サシャ「ふざけてるんですか?」

ジャン「サシャ...?」

サシャ「ジャン...私たちこのままでいいんですか?」

叩いたジャンの頬が赤くなっている。

サシャ「二人で毎日ご飯食べて、話して、たまにエッチして...それは楽しいですけど、これからも職に就かないで、こんな生活しておばあさんとおじいさんになるまでずっと....。お金がないから結婚もできない。新しい家族もできない。逃げ場もありません。誰にも....今まで世話になった親にすら二人の関係を打ち明けられない。」

ジャン「.....」

サシャ「本当にこのまま、二人だけでやっていけるんですか?」

もっと、ちゃんと働いて、ジャンと結婚して、不安な気持ちなんかない。
そんな生活がしたいのは、私だけなんですか?

ジャン「・・・やっていけるなんて、なんで俺に聞くんだ」

サシャ「なんでって.....」

ジャン「俺がここで何か答えたって、お前は安心しないだろ」

サシャ「・・・え?」

ジャン「ああ。もういい。俺寝るから」



ああ。もう、限界なんですね・・・

サシャ「っなんですかそれ。大体、ジャンは、ちゃんと就活する気あるんですか!?真面目に考え― ジャン「おやすみー」っな....!」

サシャ「....今月どれだけ厳しいと思ってるんですか」ボソッ

なんでって・・・
じゃあ、ジャン以外誰に聞けばいいんですか・・・



チュンチュン――

サシャ「ジャンおは・・・いない・・・」

サシャ(とりあえず、朝ご飯食べましょう....)

台所向かうと、昨夜なかったものがあった。

サシャ「おにぎり....ジャンが初めて私にご飯を―」

『しばらく家に帰れません。探さないでください。
ジャン

朝ご飯作った。
食べろよ。』

置き手紙。

サシャ「家出....もう知りません!!」

サシャ(どうせ、すぐにお腹空かして戻ってくるに決まってます)


大学生の時、気づくといつも傍にジャンがいて、私がミスをしたときも勉強で困ってるときも、すぐ助けてくれた。

でも、私に告白したときは、いつものジャンじゃないぐらい、かっこよくて、照れてるジャンが可愛いかった。

でも、一緒に会社をクビになったとき、ジャンは今までに見せたことがないぐらい泣いてて、私が慰めた。
その時気づいた。
私がジャンがいなきゃ、ダメなように、ジャンも私がいなきゃダメなんだって。



なのに、ジャンはその日帰ってこなかった。

次の日も

そのまた次の日も

次の次の日も・・・

ジャンが帰って来なくて一週間。

一つしかない布団で二人で寝ていたときは、すごく狭く感じたのに。
どうしてこんなに広いんだろうか。


――『本当にこのまま二人でやっていけるんですか?』――


サシャ(これが、ジャンの答えなんでしょうか)

帰ってきても返事がない。
ご飯を食べる時も1人で、お風呂も1人、寝る時も1人。

サシャ(シフト夜に変えてもらいましょうか....)

サシャ「ジャン・・・」

いないとわかっているのに、置いてある枕を見る。

『二人でやっていけるんですか?』


サシャ「・・・ジャンとなら―」

今、この気持ちを誰かに聞いてもらいたい。

サシャ「なんでいないんですか―」


サシャ自宅前

サシャ(本当のこと話したらお父さん泣きそうです....)

でも、ジャンのこと認めてもらえなくても、もうジャンとの関係を後ろめたくない。

それが、私の答えです―

サシャ「た、ただい 母「あらぁそうなんやねー!じゃあ、親御さんは安心なさったでしょう。あ、ビール飲む?」

サシャ(お客さん?)

?「いえ。すぐ帰りますんで、おかまいなく」

サシャ(?この声って.....!!)

サシャ「ジャ、ジャン!?」

ジャン「あ、サシャ!」

母「あら?サシャ帰ってたの?」

父「おお、サシャおかえり.....」

サシャ「え、な・・・なんでここに!?しかもなんでこんな和やか・・・」

私は、ジャンの姿に目が吸い込まれた。

サシャ「ジャン・・その格好・・・」

スーツ姿のジャンに見惚れてしまった。

ジャン「ああ....あのな、1週間頑張ってやっとAOT会社から内定もらえたんだ。長い間家あけて悪い...!」

サシャ「......」

ジャン「サシャ?」

サシャ(家出じゃ、なかったんですね....)

ジャン「サシャ?お前何泣いてっ!ちょ、抱きつくな!く、苦しい.....!」

サシャ「惚れ直しましたよ・・・」

ジャン「は、本当か?」

サシャ「本当ですよ!どれだけ寂しい思いしたと思うん・・・・」

父母「・・・」ジッ....

ジャンサシャ「あ・・・」

サシャ(い、今言わなきゃ。今しかないんです....!)

サシャ「あの、実はお父さんとお母さんにいっておきたいことがあって・・・じ、実は私たち ジャン「真剣にお付き合いさせていただいてます」え.....っ」

ジャン「サシャさんと」

ジャン「まだ、内定したばっかりで頼りないかもしれませんが、俺サシャを必ず幸せにします。だから....」

サシャ「ジャン.....」

ジャン「サシャさんを、俺にください!!」

その時この部屋の空間が止まったようだった。
だが、それは母の言葉によって、時間が動き出す。

母「まぁ....今更ね....大学の時から、友達だって言ってジャンくんお家に何回か遊びに来てたじゃない」

父「うむ」

ジャンサシャ「」

母「それに、お父さんなんか部屋であんたたちがキスしてんの見たって言ってたし」

ジャンサシャ「え!!!!?」

父「うむ」

母「でも、いつ言ってくれるのかなって思ってたから心配したわ。アパートで暮らすってときも、きっとジャンくんと同棲なんだって思ったわ」ふふ

父「ジャンくん。私はまだ、君を認めたわけじゃない。」

ジャン「は、はい!!サシャさんに相応しい立派な男になって見せます!」

父「ああ。よろしく頼む」

母「たまには二人で顔出しなさい」






ジャン「親ってすげぇな....でも正直びっくりした」

サシャ「何がです?」

ジャン「お前絶対親に言わないと思ったから、俺たちのこと」

サシャ「あー・・・気づいたんです。ジャンから離れてみて。ジャンとの何気ない生活がすごく幸せだって。だから、私はジャンと生きていきますっ!!って・・・ちゃんと決意表明したかったんです。」エヘヘッ

ジャン「......サシャ」

サシャ「ちょ、こんな道で抱きつかないで下さいよ.....!」

ジャン「....俺も」

サシャ「!」

ジャン「俺も同じ気持ちだったから、お前の親に挨拶にきたんだよ」

サシャ「ジャン....」

ジャン「ほら、帰るぞ.....」

ギュッ

久しぶりにジャンの体温を感じた。

サシャ「あっ」

ジャン「ほら!走って帰るぞ!」

こんな風に二人で帰るのいつぶりだったけ。

ジャン「早く飯も食いたいし、それに.....」

サシャ「...?」

ジャン「早くお前に触れたい。1週間離れてた分」

サシャ「っ―!!/////」

顔が熱くなるのが自分でもわかった。

ジャン「サシャ好きだ」

サシャ「私も....ジャンが大好きです////」



―そう、帰るんだ

あのボロアパートに

二人の家に―







end.

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