short1
□春雪
1ページ/1ページ
ジャン→サシャ
・・・・・・・・・・・・・・・・・
明日俺は卒業する。
この3年間色々あった。
俺的には充実した3年間だと思ってる。
だが、まだ心の奥に閉じ込めてる想いがある。
サシャ「ジャン!」
ジャン「サシャ....」
サシャ「どうしたんですか?元気ないですね」
ジャン「別に....」
サシャ「もしかして、私と一緒に下校するの明日で最後だからですか?」ニコニコ
ジャン「ギクッ!ち、ちげぇよ!!」
サシャ「嘘ですよぉ〜wジャンはミカサ一筋ですもんね!」
ジャン「......」
心の奥に閉じ込めてる想い。
それは、サシャが好きだということ。
入学当初は、ミカサに一目惚れして、何度もアタックしたつもりだ。
けど、ミカサは俺じゃなくて、エレンしか見てない。
高校2年の夏に思い切って告白したが、もちろんフラれた。
あれは確か、体育館裏で俺がフラれて泣いてた時、サシャに見つかった。
恥ずかしくなって逃げ出そうとしたが、俺はサシャの姿を見て足が止まってしまった。
弓道部のサシャは道具を取りに、たまたま体育館裏に来ただけだったが、もちろん部活中のサシャは、袴を履いていた。
その姿が余りにもかっこよく、美しかった。
泣いている俺を見てもサシャは俺を笑ったりしなかった。
むしろそんな俺にタオルを黙って渡してくれた。
サシャ「泣きたい時は、たくさん泣いてください。きっとスッキリします」
サシャはそう言うと、弓道道具を持って去っていった。
そのうしろ姿がなぜか俺を安心してさせた。
サシャが去ったあと結局一滴も泣かなかった。
なんでかはわからなかったが、一人になりたかった俺は、しばらくそこでぼんやりしていた。
その日は、そのまま家に帰った。
帰りに弓道場を見たが、誰もいなかった。
ジャン(タオルを返そうと思ったが、明日一応洗って返すか....)
次の日、なかなかタオルを返すことが出来なかった。
ユミルやコニーに邪魔され、話しかけられなかったのもあるが、いつものように気楽に話しかけることが出来なくなっていた。
結局、タオルを渡せぬまま放課後。
俺はサシャの部活が終わるまで校門で待ってることにした。
携帯を弄りながら待っていると、後ろからいきなり抱きつかれた。
ジャン「おい...!誰っ!?......サシャ?」
サシャ「ジャン...何か食べ物を....なんでもいいんですなんか下さい」
そこには、お腹を抑えながら死にそうな顔をしているサシャだった。
カバンの中を見てみると、誰から貰ったのか覚えていない飴があった。若干溶けている。
それをサシャに差し出すと、
サシャ「ありがとうございます.....!!」
飴を口に含み、いつものサシャに戻った。
ジャン「そんなもんで悪いな...」
サシャ「いえ!すごく助かりました!」ニコニコ
ジャン「な、なら、いいけどよ....」
恥ずかしくなって、サシャから目をそらした。
前までは、こういうのがうざったいと思ったが、今は思わなかった。むしろ、嬉しいと思う。
ジャン「あ、そうだ....」
サシャ「?」
ジャン「コレありがとな」
サシャに昨日借りたいタオルを返した。
サシャ「あの、もしかして....コレを返す為に待っててくれたんですか?」
ジャン「本当は、昼間渡そうと思ったんだけどな。なかなか渡せなくてよ....」
サシャ「そうなんですか....手間かけさせちゃってすいません...」
ジャン「気にすんな。俺が好きで待ってたんだし。ちゃんと洗ったから」
サシャ「え、すいません!ありがとうございます!...こんな汗臭いの渡しちゃってすいません...」
ジャン「....そんなことねぇよ。助かった」
サシャ「いえ....じゃあ、そろそろ帰りますかね!途中まで一緒にいいですか?」
ジャン「ああ...」
その日から俺たちは一緒に帰るようになった。
サシャの部活が終わるまで、俺は教室か図書館で勉強したり本を読み、時間になったら校門に行き、サシャと他愛もない話をしながら帰った。
いつからかわからないが、俺はサシャに惹かれていた。
いや、あの日、体育館裏で会ったとき既に惹かれていたのかもしれない。
だから、あの後涙1つ出なかったのかもしれない...と俺は思ってる。
それからか、サシャに想いを告げようと思ったが、この関係が壊れるのが嫌で結局言い出すことができずに、卒業前日の今に至る。
サシャ「ジャン?」
ジャン「.....あ?」
サシャ「もう、話聞いてました?」
ジャン「あ、悪い....」
サシャ「今日のジャンはやっぱりおかしいですね」
ジャン「そう...かもな.....」
サシャ「.....そういえば、ジャンはどこの大学行くんですか?」
ジャン「地元の四大だ」
サシャ「大学ですか...すごいですね!」
ジャン「お前は?」
サシャ「私は専門学校ですよ。私、パティシエになりたいんです」
ジャン「パティシエか...サシャらしいな。でも、この辺にそんな専門学校あったか?」
サシャ「ないですよ。というか、私日本の専門学校は行きませんよ」
ジャン「...は?」
サシャ「海外の専門学校行くんです」
ジャン「....」
言葉が出なかった。
いつも一緒に帰ってたのに、進路の話なんて今したのが初めてだった。
サシャもどうせ地元の短大、大学、専門学校行くんだろうと思ってた。
だから、俺も地元にした。
なのに....
ジャン「...なんでわざわざ海外行くんだよ...」
サシャ「パティシエになるためには、海外で修行しなきゃいけません。私は将来自分のお店持ちたいって思ってるんです。だから、海外に行きます!」
ジャン「サシャ....」
夢を語ってるサシャがすごくキラキラしていた。
ジャン「いつ、出発なんだ?」
サシャ「卒業式の3日後です」
ジャン「...!う、嘘だろ...?」
サシャ「嘘じゃありませんよ?お父さんに言われたんです!入学式の前に早く行ってその場の環境になれたほうが良いって。だから、結構スケジュールきついんですよね...えへへw」
ジャン「....」
笑ってるサシャの隣で俺はショックでしかたがなかった。
いつもの通ってる慣れた坂道がやけに遠く感じた。
卒業式後――−−‐‐
教室で皆泣きながら、ぐちゃぐちゃの顔で抱き合きあったりしていた。
でも、俺は泣けずにいる。
もちろん、みんなとの別れは悲しい...けど...
エレン「なぁ、ジャン」
ジャン「なんだ」
エレン「お前泣いてないんだな」
ジャン「お前にその言葉そっくり返す」
エレン「ジャン...お前今日様子おかしかったぞ」
ジャン「....」
エレン「式の時もボケーっとして、一斉に立つときとか立たなかったりさ...なんかあったのか?」
ジャン「別に...なんもねぇよ...」
エレン「...そうか。まぁ、お前とじゃ大学も同じだしな、またよろしくな」
ジャン「ああ...」
エレン「...なんかあったら言えよ」
ジャン「ああ...」
エレン「...」
ジャン(後3日か...俺は想いを告げたい!けど...)
帰り道―――−−−‐‐
サシャ「今日で最後ですね。この道通って帰るのも」
ジャン「そうだな...」
サシャ「今日はたくさん泣いちゃいました。ああ、目が腫れて...」
サシャは鏡を取り出し、顔を確認する。
ジャン「...サシャは好きなやつとかいないのか?」
サシャ「いきなり聞きますね」
パタンッ...
サシャは鏡をカバンに仕舞う。
サシャ「好きな人はいませんよ...」
ジャン「本当か...?」
サシャ「はい。将来のこと考えたら恋愛なんてしてる場合じゃないなって。パティシエはすごく厳しい世界なので...。仮に好きな人がいて両思いでも、多分、付き合わなかったと思います」
その言葉が胸の奥に刺さった。
俺がサシャに告白しても、それはサシャにとって邪魔でしかないんだと悟った。
サシャ「ジャンはミカサですもんね!早くしなきゃエレンに取られちゃいますよ?」
ジャン「もうミカサはいいんだよ...」
サシャ「え?他に好きな人できたんですか?」
ジャン「....」
サシャ「図星ですかwミカサより綺麗な人なんでしょう。ちょっと見てみたいですw」
それはお前だ。なんて言えない。
ふと、サシャの手に目がいった。
手だけでも、そう思い手を伸ばそうとした。
サシャ「フフーン♪家に帰ったらケーキ!」
サシャはスキップをしだし、俺を置いていく。
俺は咄嗟にサシャを呼んだ。
サシャは振り向くと、笑顔で何ですか?と答えた。
その笑顔が可愛くて、俺にとってはすごく眩しかった。
そのまま家に送って、サシャに別れを告げた。
まだ、空港でみんなでサシャを送り出すときに会える。
そう思うと、嬉しかった。
サシャが海外にいくまでの間、俺は決めた。
サシャにこの想いは告げないと。
告げたら、サシャがきっと悩んでしまう。
将来の邪魔にはなりたくなかった。
それに、この仲が壊れるのが一番怖かった。
空港―――−−‐‐
クリスタ「ううぅ〜サシャァ...」
サシャ「クリスタ、そんなに泣かないでくださいよぉ」
クリスタ「だってぇ...サシャに会えなくなるのも辛いし、サシャがすごく心配...グスッ」
サシャ「大丈夫ですよ!英語だけは得意ですから!」
ユミル「そういう問題じゃねぇよ」
ミカサ「サシャ頑張って。応援してる」
サシャ「ミカサっ!ありがとうございます!」
ミカサ「サシャは出来る子。ので、大丈夫」
サシャ「うう...ミカサァ...私頑張ります!」
ミカサ「うん」
エレン「ジャン。なんで、俺の後ろに隠れてるんだよ...」
ジャン「別に...関係ねぇだろ」
エレン「...お前さサシャのことすきだろ」
ジャン「なんで知って...!?」
エレン「なんとなく。最近の様子見て思ったんだよ...言わなくていいのか?」
ジャン「いいんだよ...」
エレン「だって、もう会えるかわかんねぇぞ」
ジャン「...それでも、サシャの為なんだ」
エレン「...よくわかんねーけど、後悔すんなよ?」
ジャン「ああ...」
エレン「あ、サシャ...」
サシャ「ジャン!あの...本当に色々ありがとうございました。色々おごらせちゃって...悪いと思ってます...」
ジャン「本当だよ」
サシャ「ッム」
ジャン「でも、また俺におごらせてくれ」
サシャ「本当ですか!?ジャン、ありがとうございますぅぅううう!!」
ジャン「おい!抱きつくなよっ!」
サシャ「すいませんw」
ジャン「まぁ、いいけどさ...あと頑張れな」
サシャ「はい!絶対パティシエになって、自分のお店持ってやりますよ!」
ジャン「じゃあ、そのお店に一番最初にケーキ買いに行ってやる」
サシャ「本当ですか!?約束ですよ!」
ジャン「ああ、約束だ...」
サシャ「ふふwあ、そろそろ飛行機の時間が!それじゃ、みなさんまた!」
クリスタ「サシャ!たまには帰ってきてよ!」
ユミル「じゃあな、芋女」
エレン・コニー「じゃあな!」
ベルトルト・ライナー「またね(な)」
ミカサ「さよなら」
俺はただ、小さく手を振った。
小さくなっていくサシャの背中を静かに見届けていた。
空港の外に出ると、少し雪が降っていた。
その空の中を飛んでいく飛行機。
きっと、あれにサシャは乗っている。
「好きだ」
言い出せなかった事
3月の別れの日
春雪を見ながら、頬を冷たく伝うのは雪ではなく...
ジャン「っ....」
俺の涙だった。
end.
the GazettEの【春雪の頃】という曲を材料にして書きました。the GazettE大好きなんです.....すいません(ノω`)
Back