ながい夢

□Rabbit☆Rabbit
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「赤也!まだ残ってたの?」
「遅刻したから校外走らされてたッス。」


そう言いながら赤也は足元のボールを拾い始めた。


「…あ!私のせいだし私やるよ!赤也疲れちゃ…」


急いで駆け寄ってしゃがみこんだ時だった。


ゴンッ!


「いって〜!」
「いった〜!」


しゃがんだ体制から顔をあげた赤也と見事にクリーンヒットしてしまった。
響く痛みに思わずおでこを押さえる。


「…ワカメって頑丈な岩の上に生えるのね。」

「…中身ポワ〜ンとしてても周りは頑強なんスね。」

「「…プッ…」」

なんとなく二人で笑った。
痛みで頭の中が麻痺しちゃったのかもしれない。

イタイ、でも可笑しい、楽しい、イヤじゃない。
そのあとは笑いながらボールを拾った。

「ありがとう赤也。おかげで片付いたよ。」
「俺らが散らかしたモンですしね。あ!俺着替えて来るんで待ってて下さいね!」

「…え?」


赤也はそのまま部室に走って行ってしまった。
まー、星もキレイだし見ながら待ってよっかな。



「夜は少し涼しいッスねー。」
「うん、もう少ししたら夏パワーもMAXになりそうだけどね〜。」


たわいもない会話をしながら夜の帰り道を歩いた。
そういえば赤也と一緒に帰るのは初めてかもしれない。
1年前は隣にあった目線が今はちょっとだけ高い。
なんだか息子の成長を見ているみたいで微笑ましいな。

それからは特に会話もなく歩いた。
夏の大三角形が夜空に大きく瞬いていて二人でそれを眺めていた。

届きそうに近く見えるのに、手を伸ばしたらこんなに遠い星たち。
そうは分かってもあんなに綺麗だからつい…。

同じように手を伸ばしていた赤也が不意にこちらを見た。


「あ〜、先輩もデコ、赤くなってるッスね。」


前髪をかきあげられたその瞬間、息が、止まった。
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