ふるえる夢
□第2夜 ミッシング・リンク
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頬に当たる冷たい感触に意識を引き戻される。
あれ?俺何してたんだ?
確かバス停に着いたらちょうどいいバスがなくて、時間潰しにブラブラしてたら見慣れた赤い頭が見えて。
アイツ帰り道こっちじゃねえのに何してんだと思ったら勝手に足が動いて。
追いかけて学校に入ったところまでは覚えてる。
ここはどこだ?
目の前のリノリウムの冷たい床から視線を上に向ける。
あれは…冷蔵庫か?
いつもブン太がチョコやらゼリーやらを冷やしてるヤツだよな…。
ここは家庭科室なのか?
なぜここにいるかは全く分からない。
カツ…、カツ…。
酷く曖昧な意識の中で、規則正しい音が響いてきた。
床に耳をつける体制になっているせいでダイレクトに伝わってくる。
カツーン、カツーン。
あれ?何だか近付いてきてねえか?
今は自分の心音が床を伝って一番よく聞こえる。
意図せずとも心拍、血圧が高まって体が臨戦体制になる。
カツ――――ン。
お互いが窺いあって作り出した静寂。
どうせならこのヒールを履きこなしているのがグラマーで色白な女であってほしい。
ガララッ!
聞き慣れた音のはずなのに初めて聞いたような気がした。
腕に力を入れてそっと扉の方を見やる。
あぁ、理想通りのスタイルを持ち合わせた美女がいる。
――――マスクと、白い手提げ袋さえなければ。