おとなの夢

□てるてる遊戯
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蓮二の部屋は、雨の日の少し気だるい雰囲気もすごく似合うと思う。
しとしとと強くも弱くもなく、乱れずに屋根を滑り続ける雨音はまるで子守唄のようだ。
読みかけの本がバサリと音を立てて床に落ち、ベットに背を預けるようにして床に座っていた蓮二がこちらに視線を向ける。


「どうしたお名前。退屈になったか?」

「ううん。ただ雨の音聞いてたら眠くなっちゃって。」


そうかと笑いながら蓮二が落ちた本を手渡してくれる。
この眠気は雨のせいもあるけど、蓮二の部屋の香りのせいもあると思う。
いつも彼が持ち歩いている香り袋と同じ香りが、この部屋には隙間なく満ちている。
湿気のせいで閉じ込められた香りはより濃厚で。

深く、深く吸い込みたくなって目を閉じる。
その瞬間、息が止まりそうな位に蓮二の香りがいっぱいになる。


チュク、チュプッ、チュッ。


まったく予想していなかった事態にたどたどしく応えることで精一杯。
せっかく拾ってもらったのに、お互いの本がまたバサリと音を立てた。
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