おとなの夢
□Infection
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23時までの大浴場にギリギリで滑り込んで、慌ただしく行水した。
スポーツレクリエーションセンターでの合宿も明日で最終日。
仕上げの各校対抗の練習試合に向けてのミーティングや準備が長引いて、入浴が遅くなってしまったのだ。
消灯前に戻ろうと浴衣も適当に羽織って浴場を後にする。
「…お名前か?」
「あれ?弦一郎も今お風呂上がり?」
呼び止められて振り返ればそこには浴衣姿の弦一郎。
まだ乾き切らずに項垂れている髪に、少し熱を帯びている頬が色っぽい。
二人の時だけ呼び合うお互いの名前も、心臓の鼓動を加速させていく。
「…赤也が風呂で泳ぎ始めてな。灸を据えていたら遅くなってしまった。」
想像に難くない状況が目の前にありありと浮かび、思わず笑ってしまった。
「間もなく消灯だな。部屋に戻るか。」
「そうだね。」
その時、弦一郎の肩にかかるタオルを見てハッとする。
「やっぱり先に戻ってて?」
「どうした?」
「練習で使うタオル外に干したまま忘れてた。明日の朝使いたいから取り込んでから戻るね。」
「それならば手伝おう。俺達が使ったものだからな。それに外は暗い。」
手を引かれて歩き出す。
思いがけず弦一郎と一緒にいられる時間ができてちょっと嬉しい。
部内に私事を持ち込むのは憚られるし、弦一郎の性格上なかなか恋人らしいことってできないからね。