みじかい夢
□桜イエスタディ
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桜の雨が降った。
春が巡る度この情景は美しくて、物悲しい。
暖かくなってきた風に揺られて、急かされるように舞い散っていく。
どうして最上の瞬間のままでいられないんだろう?
花びらが何も言わないのは、きっと答えがいらないからだ。
「待たせてしまったか?」
微睡みから一瞬で引き戻される声。
「ううん、桜見てたから大丈夫。」
ベンチに座ったまま桜を見上げる私の視線を蓮ニもなぞる。
桜に打たれる蓮二は現実じゃないみたいに見えた。
そのまま切り取って部屋の壁に貼り付けてしまいたい。
「少し歩いて見て回るか。」
手を引かれるまま歩き出す。
蓮二と見る桜は、年を重ねるごとに美しくなって。
明日は今日が昨日になって、いつかは10年前なんて日になるんだろう。
その時は誰と桜を見ているのかな。
それを考えるのが怖いのは、あなたを信じていないから?
何だかはち切れそうになって、思わず強く握った手を握り返してくれるあなた。
未来に100%なんてないけれど、やっぱりあなたといたい。
だからできる限りの力で頑張るね。