みじかい夢

□ひよこ
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「私は絶対しょっぱい派!」

昼休みの喧騒の中、名無しさんの声が一際響く。

「そうなの?俺はいつも甘いのなんだけど。」

名無しさんの意見はおかしいと言わんばかりに頬杖をついたまま幸村が呟く。

「見てなさいよ〜!明日にはそんな顔できなくなるんだから!」







―――そして翌日。

「名無しさんサマ渾身の一作!卵焼き尽くし弁当お待ち!」

「…別に頼んでないけど。」
幸村の机の上には下にごはん、上にみっちり卵焼きが詰まった弁当が乗っている。

「しょっぱいとごはんも進むんだよ☆さあ召し上がれ♪」

今日は学食の日替りランチが焼き魚だったのにな。
まぁせっかくだし…甘いの以外食べたことないけど食べてみようかな。

「いただきます。」

パチンと割りばしがきれいに割れる。

「…どう?」

あんなに自信満々に出してきたくせに、今はピヨピヨと擬音が聞こえそうな位小さくなっている名無しさん。

大体おかずが黄色一色ってなんだよ。女の子なんだから赤や緑で見映えよくカラフルに、なんて考えないもんかな。
せめてごはんにゴマ塩位欲しい。
卵焼きって言ったら卵焼き!いつも名無しさんは猪みたいだ。

「ごちそうさま。」

一言も発せず食べた俺を見てあからさまにションボリしている名無しさん。ちょっと苛め過ぎたかな。

「ねぇ名無しさん。」

「…なに?」

「また作ってきてよ。今度は焼き鮭とかブロッコリーなんかもいれてさ。」

その瞬間パァっと名無しさんの顔が明るくなる。

「うん!」

やっぱり君には敵わない。
やっぱりあなたには敵わない。

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