みじかい夢

□紡ぐ光
1ページ/1ページ

「もう真っ暗!日が落ちるの早くなったね〜★」

「そうですね。」

日中はまだ上着なしで大丈夫だけれど、帰り道は自分を抱き締めたくなる。

その時フワリと首筋が暖かくなった。

「念のために鞄に入れておいたんです。使って下さい。」

立海指定の黄色いマフラー。
お香のような不思議な香りに包まれて一気に顔が熱くなる。

「ありがとう!もうすっかり冬だね。」

「そうですね。」

柳生が目線を空に向ける。
私もつられて顔を上げる。

「わぁ!すごい星キレイ!」

「冬のオリオン座もきれいですね。」

柳生が空を指でなぞる。
右上の端の星が特に瞬いている。

「あの星すごく光ってるね。」

「ベテルギウスですね。地球から640光年の距離にある割合に近い星ですよ。」

「1光年が光が1年に進む距離だっけ?」

「その通りです。あの星は640年前の光が今我々に届いているんですね。」

640年の星の光。
それより昔の星達もたくさんある。
なんだか宇宙に吸い込まれそうな気がして怖くなって、思わず柳生の右手を握った。
何も言わずに包んでくれる大きな手。この人に出会えて本当によかった。







「ねぇ柳生。」
「どうしました?名無しさんさん。」


「あの星が生まれた頃から、私たちが出会う事って決まってたのかな。」

柳生が視線を天に向ける。

「名無しさんさんにしてはなかなか難しい質問ですね。」

「えー?それってどういう意味?」
お互い声を出さずに笑う。

「正しい答えは分かりませんが…」

「私は名無しさんに出会えた事に感謝しています。」

偶然でも必然でも。
巡りめぐった今を精一杯に輝こう。
あなたと二人で。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ