みじかい夢
□Rusty Nail
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――――カランカラン…
「いらっしゃいませ。」
「急に雨降ってきちゃって…予約してないんですけど大丈夫ですか?」
「えぇもちろんです。こちらへどうぞ。」
タオルを差し出しながらマスターが席へ促してくれる。
ライトダウンされた店内で顔はよく見えないけれど、流れるような動作が洗練されていてとても落ち着く。
「バーって久しぶり。何にしようかな…。」
チャージのナッツを置きながらマスターが静かに微笑む。
「やっぱりバーのウィスキーって種類が豊富ですね。せっかくだし何かそれで作ってもらえますか?」
「かしこまりました。」
そう言ってマスターは後ろの棚からボトルを取り出す。
手際よく注がれる二つの液体。
一見同じような色合いだけれど、ステアされてきらびやかな琥珀色を作り上げる。
「お待たせいたしました。」
「ありがとうございます。」
差し出されたオールドファッションのグラスをぐっと飲む。
静かにマスターがチェイサーを置いた。
「…一休みの間に、少し昔のお話聞いてもらえませんか。」
雨のせいか店内は私だけだ。
「私でよろしければ。」
強めの、でも甘いカクテルが体を駆け巡る。
「高校生の頃の話です。」