みじかい夢

□それは君のせい
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久々に部活もなく1日自由だった日曜日。その日は夕日がきれいでなんとなくテクテク歩きたいなんて思って。お風呂道具片手に30分近く歩いてみた。


「名無しさんか?」
ふいに呼ばれて聞き慣れた声に振り返る。

「真田!なにしてんのー?」
「湯沸し器が故障したので銭湯に行こうと思ってな。」
そこで初めて真田がタオルなどを入れた木の桶を持っていることに気付いた。
「偶然!私も散歩がてら銭湯に来たんだー。」
なかなかいい趣味だなと笑いながら真田が歩き出す。どうせ若者らしくないですよーなんてその背中についていく。ラフなグレーのシャツにジーンズの真田は、いつもより少し幼く見えた。


゙本日カップルデー
湯上がりドリンクサービズ
「…真田!一緒に入ろう!」
「ばっ、ばかもの!中学生の身分でたるんどるぞ!」
「違うの!ここのフルーツオレ、カップルデー限定の幻のドリンクなの!お風呂は別々だし入場だけでいいからお願い!」
真っ赤になってモゴモゴしている真田を引っ張って受付に行く。お風呂上がりにどうぞーと引換券をもらい、1枚を真田に渡した。
「ありがとー!1回飲んでみたかったんだ。」
「…まぁ俺も損ではないしな。では風呂に行ってくる。」
「うん、じゃあね。」
別々の暖簾をくぐって騒がしい一時が終わった。


「やっぱり大きいお風呂サイコー!そのあとのフルーツオレはもっとサイコーのはず!」
髪も半渇きのまま暖簾をめくる。

「遅かったな。」
そこにはピンと伸びた背筋で腕を組む真田がいた。
「真田!?私すごくお風呂長かったし待っててくれなくてよかったのに。」
「せっかくの幻の一品だからな。一緒に飲んでみようと思ってな。」
あれだけ自分ではしゃいでおきながら、フルーツオレなんて二の次になってしまった。
腕捲りしたシャットからのぞく筋ばったたくましい腕。湯上がりでほんのり赤くなった肌が少し汗ばんで色っぽい。まだ少し濡れていて無造作にはねる髪なんて、学校では絶対見られない。

「…どうした?」
「…っ!」
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