みじかい夢
□夕焼けデータ
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「やばっ。明日提出の課題置いてきちゃった。」
部活後、教室に向かって走る。
いつも教科書類置いてくからうっかり忘れちゃうんだよね。
「あれ?」
西陽の射す教室にひとつの黒い影。
「…柳?」
机に突っ伏して目を閉じている。
背中は規則正しく上下していて、私が来たことに気付いた様子はない。
日に透ける茶色い絹糸みたいな髪が一筋サラリとこぼれた。
「なんか寝てても起きてても、顔あんまり変わんないよねー。」
自分で言ってちょっと笑って隣に座ってみる。
いつもはキッチリしていて隙のない彼が見せる無防備な姿が愛らしい。
「大好き。」
思わず口に出た。
聞こえてはいないだろうけど恥ずかしくなって教室を飛び出す。
「…俺もだ。という前に逃げられたか。」
名無しさんが忘れ物をして教室に戻ってくる可能性は100%だったからな。
仕方ない。
結局忘れていった課題を届けてやるか。
俺の気持ちと一緒に。