みじかい夢
□冬の音
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〜♪〜♪
「あ!この音!」
「これは完全に石焼き芋だろぃ!」
そう言うやいなや走り出すブン太。
「追いかけるの!?」
「今年初のお出ましだぜ?食わない手はないだろぃ!」
食べ物の事になるとテニスしてる時より足が早い…気がする。
あっという間に姿が見えなくなった。
「…隣のかわいい子より焼き芋デスカ。」
自分で言って悲しくなる。
そりゃ彼女でも何でもないけどさ。
冬の気配を帯びた寒さに余計に切なくなった。
…15分後。
「うぅ〜。ただ立ってるだけだから寒くなっちゃった。」
もうイモ男なんて放置して帰ろう。
ってか放置されたの私か!
〜♪〜♪
「!!」
憎き音がまた接近してきた。
寒いしもう走って帰ってやる!
バダバタ走って走って角を曲がろうとした時だった。
「うぉい!?」
「キャッ!」
…イモ男もとい大きな紙袋を持ったブン太とぶつかる。
「なに泣きそうな顔してんだよ。ほら、イモやるからよ。」
そのイモのせいで泣きそうなのに…
「いらない。大好きなおイモ減るでしょ。」
かわいくない事言ってるのは分かってるけど、なんか強がらないと気がすまない。
「そりゃイモは好きだけど…名無しさんの方が好きだぜ?」
ホカホカの新聞紙の香り。
焼き芋から始まる恋の予感。