FourSeasons

□昔話 An Old Tale
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「昔むかし、あるところに、皇子さまが4人いました。1人目の兄は賢く、2人目の兄は嫉妬深く、3人目の兄は純朴で、4人目の弟は不思議な力を持っていました」
「ふしぎな力?ちょうのうりょく?」
小さな少女が愛らしい声で尋ねた。
「いいえ、超能力よりももっと不思議な力よ」女の人が優しくささやいた。
「じゃあ、まほう?まほうがつかえるのね!」女の子は声を押し殺して叫んだ。
「そうよ、魔法が使えるの。でもね、2人目の兄に妬まれて、殺されそうになってしまうのよ――そこで、1人目の兄は言いました。『お前のその力で、どこか遠くへ逃げ延びなさい。ここへは戻ってはいけない』。弟は言うとおりにしました。出発の朝、それまで黙っていた3人目の兄が言いました。『これを持っていってくれ。幸福の四葉だ。私たちは離れていてもひとつだと信じてほしい。そして、私たちの代わりに、新たな仲間ができることを願っている』。弟は四葉を手に旅に出ました」
「よつばのクローバー?」女の子が目を見開いた。「だから、幸せって言われてるの?ママ」
「さあ、どうでしょうね。でも古い古い物語だから、そうかもしれないわ。――さあ、もう寝る時間よ。続きはまた明日。さあ、目をつぶって。そう、いい子ね。おやすみなさい」
「おやすみ、ママ」
女の子は安心して目を閉じた。
やがて寝息を立て始めた娘を後に残し、母親は部屋を出て行った。


このときは誰も知らない。
物語の続きが語られる日は来ないことを。

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