長編

□2. 口角が上がる様を確かに見た
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それから約2時間が経過した。だが仙波はまだ戻ってこない。
長引いているのかと舞が心配していると、交番の中から武田が出てきて言った。


「舞、交代だ。中で飯食ってこい。」

「え?まだ大丈夫ですよ?」

「もうすぐ仙波も帰ってくるだろう。弁当があるからついでに温めてやれ。」

「はあ…分かりました。じゃあ先輩、お願いします!」



休憩室の中に入ると暖房が効いており、じんわりと暖かさが戻ってくる。
机の上に弁当が置かれていた。レンジで温め直していると、ただいまーと声がする。



「……あー…温まる……。」

「お帰り!遅かったね、ナミくん。」

「証拠がなかなか見つからなくて…。思ったより時間くっちゃった。」

「お疲れ様!はい、お弁当。」


温かい弁当を食べ終わる頃には、2人とも体はしっかり温まっていた。
武田と交代してくると出ていった仙波を見送り、舞は訂正だらけの交番だよりを仕上げていく。


「……………。」


いくら何でもこれは酷い。訂正なしの方が少ないだろう。
もう1度打ち直していった方が早いと、舞は新しくデータを作っていく。


「…ム、お疲れさん。」

「お疲れ様です。先輩、交番だよりですが…新しく作り直しますね。」

「……そうだな。頼んだぞ、舞。」


はーいと返事してパソコンと向き合おうとすると、頬に熱いものがピタッと当てられた。
キョトンとして見ると缶コーヒー。武田が真っ赤な顔を逸らしている。


「?」

「……早く受け取れ。火傷するだろうが。」

「どうしたんですか?」

「あー…その………察しろ!!」


そっと舞が受け取ったのを確認し、武田はそそくさと弁当を広げていく。
だが頑張れよと小さな声で呟いたのを、彼女はしっかり耳にしていた。



「……ふふ、酷い文章!」



改めて仙波の交番だよりを見直しながら、舞は缶コーヒーをそっと口に付ける。



「熱っ!」

「…火傷するなよ。」



猫舌な自分にはまだ早かったと、冷ましながら小さく笑みを零した。

























「…では今月の目標を、各交番ごとに発表してもらおうか。」



月の始めに警察署で開かれた集会で、それぞれの交番が目標を発表していく。
署長の指名を受けたハマチョー交番の3人。武田から順に発表していった。



「犯罪根絶、犯人殲滅!」

「魔術の腕を上げていく!」

「なるべく毎日パンツを履き替える!」



バラバラな内容の目標を言われ、署長も思わず目が点になる。


「……武田、殲滅しちゃダメだ。舞は公務に集中、仙波は目標じゃなくて日課にしろ!」


他の警察官からクスクスと笑われ、恥をかいたと怒る武田。
交番に出勤しようとしたその時、署長がおーい!と彼を呼び止めた。



「お前さんには署長のワシから、スペシャルノルマがあるぞ!」
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