儚い王女
□No.1 強く悲しい表情
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『はあっ、はあっ!』
息を切らして走る、一人の少女。
その大きな瞳からは大粒の涙が幾度となく溢れていた。
その足の下には、いくつもの死体が転がっている。
「きゃあっ!」
死体に足を取られ、転ぶ。
その小さな身体からは、大量の血が流れている。
「こっちに行ったか!?」
「さっき毒を撃ったばかりだ!ヴァンオンといえど、そんなに遠くは行っていないはずだ!」
「逃がすな!10億ベリーかかってるんだ!」
「ヴァンオン第二王女ウィル・ソフィアは近いぞ!」
「あいつが捕まれば、俺の妻と子どもは助かるんだ!」
「早く!」
そんな人々の声が飛び交う中。
少女は、今から迫るであろう恐怖に肩を震わせていた。
「い、嫌。助けて…ルパン様…!」
震える身体を押さえ、逃げるための道を必死に探す。
その目線の先には、小舟が一隻。