夕彩。

□複雑な乙女心、気付いてよ!
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昨日の夜、前髪を切った。
正しくは切って”貰った”の方が正しいけれど、それは置いて置く。


長い前髪はいつでもピンで留めていたけれど、明日からは普通に手を加えずにしようと思う。


眉下に切って貰った前髪は所謂「ぱっつん」ってやつで。
キャサリンやユノ、キヨカの手によって綺麗に切り揃えられている。
流石、女子力高いなあ。


洗面台の鏡の前に立って、櫛で軽く梳かす。
心なしか前髪が軽い。切ったから当たり前か。


今日から暫くは花の飾りが付いたピンとはさよなら。
いや、一応学園には持って行くけどね。


「お早う。前髪どう?」


ばしゃっと顔を洗っていると後ろから声。
タオルで顔を拭いて、見るとユノとキャサリン。


「お早う、二人とも。昨日は有難う。いい感じだよ。」


えへへ、と綺麗に揃った前髪を指で弄る。
前髪を切ったのは久しぶりだから何か変な感じがする。
何だろう。…ちょっと恥ずかしいな。


「キヨカとハナコは?」


そういえば二人が居ない。
キヨカには前髪のパターンを調べて貰ったし、ハナコは前髪を切ることを勧めてくれた最初の発端者だ。


早く改めてお礼をちゃんとしたい。


「着替えてるんじゃないかしら。すぐ来るわよ。多分。」


制服のリボンを整えながら言うキャサリン。
ちらりと私を見ると、「いいんじゃない?」と笑う。
キャサリンが良いって言ってくれてる。良かった。


「アラタ、気付くといいね」


にこり、と素敵な笑みでユノで言った。
同時に私の手も前髪で止まる。ぴしり、石のように。


「な、ななな、」


「私達が気付かないとでも思った?」


「残念ながらバレてるわよー」


ぱくぱくと口を開閉していると、面白そうに笑う二人。


何て事だろう。バレてないと思ってたのに!


不自然に思われないようにアラタとも普通に会話していたし、誰にもこの話はしていない。
何より照れないで話してたもん…!


「因みぬアラタ以外の第一小隊にもバレてるわよ」


「わかりやすいもんねー。みんな知ってるんじゃない?」


にこにこと笑いながら私のゲージを奪う二人。


わ…わかりやすい…だと…!?


「明らかに前よりアラタと話す回数多くなったよねー」


「最近ずーっとアラタを見てるよねー」


「あ、第一小隊が出撃してる時、絶対に観て帰ってるしねー」


ぐさぐさぐさぐさ。
何て事だろう。全部見られていたとは。
ハルキやヒカルだけならまだしも、クラス全員…。
なにそれ凄く死にたい。寮の庭に埋まりたい。


「まあでも、アラタにはバレてないから大丈夫だよ!」


ぐっと指を立てるユノ。


うん、まあ。……それならいいや。
バレてたら恥ずかし過ぎて死ぬ。


そんな事を思いながら、前髪の間に指を入れた。





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