歌音、

□ありがとう、と呟いた
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彼は、…彼は確かにソングロボットだと言った。




そっと長い睫毛を伏せて、静かに。…けれどそれでもはっきりと。
鮮やかな青い瞳は揺れていた。
ゆらゆらと、何かに怯えるように。



元々感情が乏しい彼がこんな表情をするなんて思わなかった。
表情をあまり表に出さない。話すのも必要な事だけ。



……静かな人だと思った。



ロボット…か。確かに、それが本当なら今まで不思議に思っていた事にも筋が通る。



凄いパソコンに詳しい事。
夏になると「オーバーヒートする」と言って異常に寒い(最早寒い)部屋にカミュさんと一緒に閉じこもったり。
15歳の成長期真っ只中なのに、物凄く少食。
その癖力は物凄く強い。
肩が外せるというのも驚いたし。
上げていくとキリがない。



……でも、嘘だとは思わない。



だって、彼がこんなに不安そうな顔をしているのを見た事がない。
何時だって、大人びた表情をしていて、年相応の顔なんて初めて見たから。



(否定なんて出来ないよ)



彼はこんな大きな秘密を一人で抱えていた。
ロボットといえど、言うのには勇気がいたはず。




だから、




「信じるよ」




私が彼、……藍を好きになったのは中身だもの。
「からっぽ」のように見えて、誰かの片割れのような、儚い感情。




ロボット、人間なんて関係ない。
彼は確かに「此処」に居る。
それだけでいい。架空のモノを信じるよりずっと良い。




からっぽ。…だけど、人間に憧れていて。
以前、彼は自分のことを「からっぽ」と言っていたけれど。




それなら、……ねえ、藍。





「足りないものは私が補ってあげる」





一人で駄目なら二人で補おう。





着いて行くよ、私は。





「一緒に”生き”よう」






ありがとう、と呟いた




柔らかな微笑みと共に彼が口を開く。



冷えた、けれど爽やかな風が頬を撫でた。




冬はもう、すぐそこまで来てる。









*_

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