作品群
□機動戦士ガンダム00〜アルカナの護り手〜
2ページ/8ページ
「ついに、彼らが動き出すのね。ソレスタルビーイングの、ガンダムマイスター達が……」
軌道エレベーターの天柱にて、王留美(ワン・リューミン)がそう言った。
◆◇◆
ファーストフェイズ終了……内容はAEUの新型をあしらって私達という存在を世界に知らせる、だったね。
私ことリリス・プリーストが搭乗している機体、『GN-006ガンダムソフィア』は起動エレベーターに向かって飛行していた。
まぁ、あんな事してもプライドの高いAEUがそう簡単に諦めるとは思えないけどね。
その時、アラートが鳴った。
後方から通常速度で飛行するソフィアに向かって全速力で近付いてくる機体が三機。接触までおよそ六秒。
これらから先程破壊したAEUのイナクトの前世代機、『AEU-05ヘリオン』であるとわかる。
そして私はソフィアを軽く右に動かす。すると、さっきまでソフィアのいた位地にはヘリオンのリニアライフルが通り過ぎていた。
次いで、ヘリオン達がソフィアを掠めるように通っていった。
───挑発してくれてんの?上等だよ
ヘリオンは旋回し、ソフィアと対峙する構えをとった。
私はそれに対応し、右肩にある歪な剣を右手で抜き取る。
そしてソフィアを前に出し、剣を『躱せる』ように動かす。ヘリオンは私の注文通りに躱し、剣であると理解したのか、ヘリオンはソフィアから離れるために後ろに振り返り……
ヘリオンのうち二機の翼が破壊された。
私はこうして後ろを振り向いて距離をとると見て、敢えて剣を振り下ろしたのだ。が、私の剣の刀身の上には銃口があった。
剣の名称をGNガンブレード。これの銃の部分で一機の両翼を撃ち抜いたのだ。
ではもう一機は何故?その答えはというと、先程落ちていったヘリオンがいた場所に右手の折りたたみ式の剣が特徴の青と白の機体……赤と黒のソフィアとは真逆の機体があった。
すると、AEUが所有している軌道エレベーターの方から二十機のヘリオンが現れた。
そう、AEUが所有している方から。
実は今回のセカンドフェイズ、本当の目的がこれなのだ。別施設に配備されている筈のAEU軍部隊を動かし、その軍隊規模が条約違反モノであると露見させるためだったのだ。
『やはりAEUはピラーの中にも軍事力を……これは条約に違反している』
と、その青と白の機体、『GN-001ガンダムエクシア』のパイロットの少年の声が聞こえた。
「そーだね。せっちゃんからしたら許し難い事態かな?」
『……ああ。それで、この距離からの射撃は近接戦に特化したエクシアとソフィアでは難しいな』
彼、せっちゃんこと『刹那・F(from)・セイエイ(聖永)』は基本的に無口だ。因みに彼のこれはコードネームで、本名はわからない。だが、コードネームの意味はわかる。
永遠より長い時から切り離された一瞬よりも短い時。
なんとなくだが、ロマンスな名前だ。彼も結構お茶目だね。
「さてさて、任せたよ、ロックオン・ストラトスさんや」
私は眼下の地表を見据えてそう言った。
◆◇◆
巨大な荒野の一角、モスグリーンと白を基調としたモビルスーツ、『GN-002ガンダムデュナメス』が岩壁に寝転がるように上空を見据えていた。手には長距離狙撃用GNスナイパーライフルが握られている。
そのコクピットで、パイロットシートにリラックスしたポーズで足を組んでいる男がいた。
ロックオン・ストラトス。彼はどこか陽気な笑みを浮かべ、鼻歌交じりに望遠カメラで映し出されている戦況を見ていた。因みに歌っているのは北アイルランドに伝わる民話を元にした童謡。
『エクシア、ソフィア、カコマレタ、カコマレタ』
コクピットの右前部、専用のポッドに収まっている独立型AI式球形小型汎用マシンのハロが合成声をあげた。
「ははっ、流石に刹那とリリスでも手を焼くか」
ロックオンは身体を起こし、デュナメスコクピット最大の特徴、大型ランチャー並のサイズを誇る精密射撃用スコープシステムを引き摺り下ろし、セットし、小型の接眼用モニタがせり出した。
「なら、狙うとしようか」
ロックオンはそれに顔を近づけた時、先程までの笑みは消えていた。
「行こうぜ、ハロ……ガンダムデュナメスと、ロックオン・ストラトスの初陣だ!」
ロックオンがグリップに手をおくと、デュナメスの額にあるV字型センサーが下にスライドし、ガンカメラモード用のカメラアイが現れた。
モニタに映し出されたヘリオンにポインタが重なった時、ロックオンはトリガーを引いた。
ライフルから放たれた光線は寸分の狂いもなくヘリオンの翼を撃ち抜き、ヘリオンが落下する。
「上手く脱出しろよ……コクピットは撃ち貫いてねえんだからよ」
突然の狙撃に動揺しているヘリオン隊をよそに、デュナメスは次々と弾を撃つ。
二撃、三撃、撃つたびに落下していくヘリオン。
「デュナメス、目標を狙い撃つ!」
更にトリガーを引いた。
「四つ!五つ!六つ!」
次々とヘリオンはおとされ、十分と掛からず、ヘリオンは二機のみとなった。
それらをエクシアとソフィアが仲良く斬り落とした。
ヘリオンがいなくなったことを確認したロックオンは、スコープから顔を離し、またリラックスするようにシートにもたれかかった。
「セカンドフェイズ、終了だ」
デュナメスのV字型センサーがガチリと元の位置に嵌り、セカンドフェイズの終了を知らせた。