作品群
□魔法少女リリカルなのは〜鉄の楽園〜
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時空管理局、本局。
ここでは、十九年前のJ.S.事件と十七年前の星帝事件、十三年前のエクリプス事件、別名第二次星帝事件で起こった管理局の不備を反省し、割とよい方向に向いていた。
「ん……?おい、高町三尉。ちょっと来い」
「ふぇ?なんでございましょーか、たいちょー」
この茶髪の髪を団子状に纏めた茶色い目をした少女、名を高町鈴蘭という。年齢は16歳。どうでもいいが、彼氏いない歴=年齢。
「なんでございましょーもなにも、これは酷すぎるだろ……」
隊長と呼ばれた男が鈴蘭に渡したのは一枚の報告書。
そこには先日彼女が行ったロストロギア探索の報告書が書かれていたのだが……内容がお粗末極まりない。
「こ、これは……どこからどう見ても完璧パーペキパーフェクトじゃないですか!
いや、流石私!惚れ惚れする!」
「阿呆かお前は!?なにがどうなったら『ロストロギアを力尽くで鎮めた』が完璧だ!?
ロストロギアの詳細はきっちりかっちり調べたろうが!もっとその辺考えて報告書書け!」
「なっ、しっつれーな!私が丸一日考えて提出した報告書を完璧じゃないと!?
完璧すぎじゃないですか!簡潔で!」
「簡潔すぎるから困っているんだ!もう少し内容濃くしろ!薄い本(ソリッドブック)か!?」
年齢三十路の妻子持ちの隊長と十六の娘による口論。部隊の人間からは「またあの二人がやってるよ」レベルでいつも通りである。
「はぁ、はぁ……くそ、どうしてお前と喋っているとこうも声を張らなきゃいけないんだ……」
「たいちょー、あんまり怒りすぎると、皺寄りますよ?」
「誰の所為で怒っとると思っているんだお前は!?」
ぜえぜえと肩で息をする部隊長。これはもういっそ彼女を解雇しようか、と考えたが、そういう訳にもいかない。
何故なら、彼女はかつて時空管理局希代のエース、高町なのはのクローン─一般的には高町なのはの弟と思われているが─、高町ひかると、天空の鷲獅子、第一次星帝事件の管理局変革のきっかけとなった高町琴音(旧姓成宮)の娘であり、星帝事件において第二次星帝事件における管理局変革のきっかけとなった、星帝ウォロ・N・高町(旧名ウォルドセロ・ネヴュラ)一等空佐、聖王のクローン、高町ヴィヴィオ一等空尉の妹であるからだ。
当然、両親の天才的な才能と膨大な魔力を継いで生まれた彼女は時空管理局において重宝される。それでも、管理局入局を志願したのは彼女の意思だが。
その時、唐突に部隊長の机にある電話が鳴った。因みにこの部隊長は科学の発展著しいミッドチルダにおいて、旧式の受話器を使うという変わり者である。
「はい、時空管理局所属、空士109隊隊長のライア・マッケンジー二等空佐ですが……ん?あぁ、アンタか。
ああ、ああ……は?それは本当か?
いや、こっちは一向に構わん。了解した。では、またな。
ん?今日飲みに?いいぞ、嫁さん連れてこい。今日は俺が奢る。
じゃあな」
隊長、ライアは受話器を元の位置に戻し、鈴蘭を見る。
「なんでしょーか。はっ!まさか隊長、私に惚れて……
ダメですよ隊長、隊長には奥さんと息子さんがいるんですからいだだだだだだだだだだだだだだだだだだだ!!!!」
阿呆な事を抜かす鈴蘭にライアはアイアンクローを決める。
「ちげえよ阿呆。お前の兄貴から連絡がきた」
「いだだだだだ……ってウォロ兄さんから?なにがどうして?」
「お前、転勤な。転勤先は来月お前の兄貴が建てる部隊だとよ。教導隊として。
それと、先日聖王教会のカリム殿が出した預言に備えるために、とさ」
「はぁ……それは一向に構いませんけど、そろそろこの手離してくれませんかね?」
「ん?あぁ、すまんすまん」
鈴蘭は死にそうになったと呟きながら、自分の頭を摩りながら自分の席に戻っていった。