作品群
□問題児たちと狐が異世界から来るそうですよ?
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壱ノ尾 去る者は日々に疎し
その日、高町竜胆は最悪の気分だった。
なにが最悪かというと、竜胆が親と兄弟姉妹を失う日の夢を見てしまったからだ。
家族が全員死んだ日のことは何時だって鮮明に思い出せる。
家族が死に、自分だけ生きた時は周りの人間には死神とまで呼ばれた。
勿論、親の友人や、親しい仲の人達は手を差し伸べてくれた。
だが、竜胆はそれを全て拒否し、友人の家がどれだけ全力で探そうと見つからないような場所に住んでいた。
一応、親に貰った命であるからには生きることは義務であると考える彼は最低限の生活はしている。
だが時折、その鮮明すぎる映像が夢にまで出て来て、彼にその日生活というものを忘れさせてしまう。
そんな中、偶然彼は見つけた。
目の前にある封筒を。
なんとなく、気になったのでそれを見る。それには、見事な行書体で「高町竜胆殿へ」と書かれていた。
「なんだ……これ」
自分宛の手紙?阿南が総力を挙げても見つけられないような場所に?
竜胆はそれに疑問を感じながら、封筒を開けた。
そこには、こう書かれていた。
『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。その才能(ギフト)を試すことを望むのならば、己の家族を、友人を、財産を、全てを捨て、我らの箱庭に来られたし』
「……なに、これ───ッ!?」
竜胆はその手紙が突然光出したことに、驚愕した。
次に瞳を開けた瞬間、竜胆は空に放り出され、目の前の景色は完全無欠に異世界だった。