作品群
□機動戦士ガンダム00〜アルカナの護り手〜
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西暦2307年
AEUの最新鋭可変式モビルスーツ、『イナクト』が縦横無尽に駆け回っていた。
そのイナクトのパイロット、パトリック・コーラサワーは嬉々としてイナクトと自分を褒め称えるような言葉を発していた。
そんな光景を見て、イナクトの機体評価をする男、名をビリー・カタギリという。
そのビリーに、一人の金髪の男が話しかけてきた。
「AEUは起動エレベーター開発で遅れをとっている。
せめて機体だけでも……というところか」
「おや、いいのかい?MSWADのエースがこんなところにいて」
「勿論、いいわけがない」
きっぱりとそう言う青年。彼はグラハム・エーカーという。
「AEUも剛殻だな。人革の十周年記念式典に新型を披露するあたり……カタギリはどう見る?あの機体を」
「どうもこうも、うちのフラッグの猿真似だよ。
唯一違うのは……独創的なデザイン、かな?」
ビリーが苦笑しながらそう言うと、それが聞こえていたらしく、パトリックは激しく怒り出した。
『そこ!聞こえてっぞ!
今なんつった?えぇ?おい!』
「……集音性は高いようだね」
「どうやらそのようだな……ん?」
ビリーと会話をしていたグラハムが急に話を切る。上空になにか異変が感じられたので上を見る。
「空になにかあるかい?」
ビリーもそれに気づいたらしく、グラハムの視線を追う。
そこには、起動エレベーターを沿って移動する緑の粒子のようなものを散布させている赤と黒の機体。
「モビルスーツ……?まさか、もう一機あったのか?
……いや、あれはどう見てもフラッグやイナクト、ましてや人革のティエレンとも開発コンセプトが違う……」
グラハムが冷静に考察している中、それに向かって行っている機体。
勿論、パトリックのイナクトだ。
◆◇◆
「目標機体、AEUイナクトを確認。ソフィア、任務を開始します」
ソフィアと呼ばれたモビルスーツの中にいる一人の少女。彼女はイナクトを見つめていた。
『人様の領土に土足で踏み込んできたんだ……ただで済むわけねえよ、なあ!』
「……なんだ、例の最新型って聞いたから、結構やれるかと思ってたけど……勘違いだったか」
少女はモビルスーツの背中から散布させていた粒子を薄め、わざわざ聞こえるように言い出した。
『あんだと?小娘。
俺が誰だかわかってんのか?AEUのパトリック・コーラサワーだ。模擬戦でも負け知らずの、スペシャル様なんだよぉ。
知らねえとは言わせねえぞ!』
「知らんね」
パトリックの長い口上を切り捨てるようにイナクトの左腕を腰から取った実体剣で切り裂いた。
『なっ……!』
「なんと!?」
一瞬、なにが起こったのか理解できなかったパトリックと、それを純粋に驚愕するグラハム。
赤いモビルスーツは更にもう一つ、ビームサーベルを取り出した。
『わ、わかってねえだろ!』
「だから、知らないってば」
少女は呟きながらバシュバシュとイナクトを切り続ける。
『俺は!』
『スペシャルで!』
『二千回で!』
『模擬戦なんだよぉぉぉぉぉ!!』
「ミッション完了っと」
最後の一言と共に下半身だけとなった機体が大地に伏した。
「失礼」
なにを思ったのか、グラハムは突然近くにいた男性の双眼鏡を奪い取った。
「え、ちょ……」
「失礼だと言った」
男性の方にそう言い、グラハムは赤と黒の機体を見る。
機体の額あたりに文字があった。
「GUNDAM……あの機体の名前?」
グラハムの呟きと共に、その機体は空へと消えていった。