ボーボボ一行は旅の道中、野宿することも決して少なくはない。街から街までの距離が思ったよりもあったり、深い森で道に迷ったり、その日の内に街にたどり着くまでに至らなかったりと…理由は様々だが、そういう時は無理に夜通し歩くことはせず、テントを張って夜を凌ぐ。徹夜では体力が保たないし、何より夜道は危険で溢れているからだ。





一行が所有するテントは二つ。ビュティと田楽マンが寝るため且つ荷物を置くためのテントと、残りの男性陣が寝るためのテントだ。火の番兼見張りは一度も寝たことが無いと豪語しているボーボボが主に務める。たまにソフトンも加わり、二人で夜通し話に花を咲かせていることもあるが。







今日も今日とて野宿が決まり、ボーボボとソフトン以外は全員所定のテントに入り、眠りについていた。梟の鳴き声と虫達の大合唱にメンバーの寝息(と鼾)が微かに聞こえる、そんな夜の帳。








破天荒は一人、他のメンバーが眠りについているにも関わらず眠れずにいた。ゴロゴロと何度も寝返りを打ちながら、はぁ…と溜め息を零す。体は疲れている筈なのに、何故か眠気が襲ってこないのだ。



他のメンバーの寝息に触発される様子も無く、逆に目が冴えていく一方だ。なんとか寝てしまおうと目を閉じてみるも、全くもって眠れない。寝返りばかり繰り返し、時間が無為に過ぎていく。




「寝れねぇ…」




ポツリと呟くが、他のメンバーが起きる様子はない。すっかり暗闇に慣れた目で辺りを見る。すぐ隣にはヘッポコ丸が眠っていて、その向こうには天の助。そして何故かその天の助の足を枕にして首領パッチが眠っていた。「おやすみ」と全員が声を掛け合った時は確かに天の助の隣で行儀良く寝転んでいた筈なのに。寝相が悪いにも程がある。あ、でもシーツはしっかり被ってはいる。なら風邪をひく心配は無さそうだ(首領パッチが風邪をひくのかは謎だが)。







首領パッチの寝顔をしばらく眺めた後、視線は隣でスヤスヤと安らかな寝息を立てて眠っているヘッポコ丸に再び向けられる。首領パッチに比べたらヘッポコ丸の寝相は綺麗なもので、シーツの乱れもほとんど無い。とは言え数度の寝返りは打っていて、その末、今は破天荒の方を向いて寝顔を晒している。





薄く開いた唇はか細い吐息を等間隔で吐き出していて、ヘッポコ丸が深い眠りに落ちているのが窺える。何の気なしにその唇に指先を触れさせ、ゆっくりとなぞる。多少乾燥しているが比較的ふっくらしているそこ。あぁいっつもこの唇が俺のをくわえてんだっけ…と、だいぶふしだらなことが頭を過ぎる。







すっかり冴えてしまった頭でふしだらなことを思い描いてしまった破天荒に、小さな悪戯心が芽生える。月明かりが微かに差し込むテントの中、誰に目撃されることのない破天荒の顔が、不敵な笑みを形作ったことを知る者は、一生現れないだろう。







確固たる目的を持って伸ばされた破天荒の手は、薄いシーツ越しにヘッポコ丸の股間を弄る。揉み込むように刺激を与え、眠っているヘッポコ丸の欲を引き出そうと試みる。




「ん…」




寝息とは違う熱っぽい吐息と共に、ヘッポコ丸の身体がピクリと震えた。眠っていても、身体はしっかり快楽を感じ取っているらしい。随分快楽に従順というか、身体は正直というか…まぁ十中八九、破天荒がそう仕込んだからであろうが。




その反応に気を良くした破天荒は、本格的な愛撫を施す為に身を起こし、ヘッポコ丸に覆い被さった。寝間着の間に手を差し入れ、さっきとは違う直の刺激を与え始める。左手は乳首を、右手はヘッポコ丸の自身を、慣れた手付きで扱く。徐々に形を変え始めるそれらに、破天荒の口角が上がる。





依然としてヘッポコ丸は目を覚まさない。だが、身体は着実に絶頂へのステップをクリアしていく。赤くしこっている乳首に爪を立てると、眠っているとは思えない艶やかな喘ぎがその口から漏れる。自身は完全に起ち上がり、透明な雫が破天荒の手を濡らしていく。もういつ目を覚ましてもおかしくない状況であるが、破天荒は気にせず愛撫の手を強める。




「んっ…ぁ…」




ヘッポコ丸が身を捩り、吐息とも喘ぎとも取れる声がひっきりなしに漏れ出てくるようになった。その声は、静寂に包まれたテントの中では些か大きなもので。





このままではすぐ側で寝ている首領パッチや天の助が起きてしまうことを危惧した破天荒は、胸を弄っていた左手をヘッポコ丸の口元へ移動させ、その口を塞ぐ。途端に喘ぎ声は潰され、二人が目覚めるリスクは無くなった。呼吸を制限されたことによりヘッポコ丸の顔が少し歪んだが、起床には至らなかったようだ。この少年、なかなかにしぶとい。






睡姦も悪くないと思っている破天荒だったが、やはり少しも抵抗されないのは面白味に欠けると不満に思っているのも事実だった。なので、そろそろ本気でヘッポコ丸を起こすことにしたようだ。左手を動かすわけにはいかないので、右手の愛撫を活性化させる。今まではちょっとだけ手を抜いていたらしい。






寝間着をずり下ろし、ヘッポコ丸の自身を露出させる。零れる先走りを全体に塗り込むようにし、上下に強く扱く。更に、浮き出た血管に爪を立てたり、カリの部分をこねくり回したり、尿道に指先を食い込ませたり…ヘッポコ丸が弱い部分に執拗な攻めを与えていく。




さすがにそこまでされて、眠っていることは出来なかったらしい。自分の身の異変を遅ればせながら察知したヘッポコ丸が、ようやく眠りから覚めた。




「ふ…? …ん!? んん…!」




勿論、起きたら恋人が自分の口を塞いでるしシーツはほとんど被ってないし下半身には違和感があるしで、ヘッポコ丸が狼狽えるのは当然のことだった。起き抜けで頭が回らないとは言え、破天荒が寝ている自分に何かちょっかいを出していたことは十分に察知出来る。破天荒が笑って起きたヘッポコ丸を眺めているのだから、余計にである。



そして破天荒は破天荒で、ヘッポコ丸がようやく起きたからと言って愛撫をやめる筈も無く。




「ふ、んん?! ん、んん…!!」
「静かにしろよ。ほら、とりあえずイっとけ」
「んっんん…!!」




小声でヘッポコ丸に注意を促し、破天荒はラストスパートと言わんばかりに手の動きを早めた。破天荒の腕を引き剥がそうともがくヘッポコ丸だったが、起きた時から身を包む快楽により、力が全く入らない。弱々しく破天荒の腕を掴むだけで、その動きを抑制することは叶わなかった。






静かに、と言われたが、もとより口を塞がれているのでまともに声など出ない。ただただ苦しいだけだった。呼吸もそうだが、意味も分からず与えられる快楽で身体全部が辛かった。沸き起こる射精感に足がシーツを蹴る。こんな、身近に仲間が居る所で達したくないと拒絶したいが、生憎言葉は封じられているし、手も力が入らないから破天荒を止められない。




「んんっ…、ふ、ぅんんっ…!!」




結局、ヘッポコ丸はそのまま破天荒の手の中で絶頂を迎えることとなった。ビクビクと身体を痙攣させ、破天荒の手の中に全てをぶちまける。言い知れぬ解放感と脱力感に、ヘッポコ丸は四肢をシーツに投げ出した。荒い呼吸を口を塞がれたままで繰り返す。息苦しさと達した余韻で、涙が頬を伝った。



寝間着に突っ込んでいた手を引き抜いた破天荒は、白く汚れた己の手を見て満足そうに笑った。そして小声で注意を促した。





「手外してやるから、デカい声出すなよ」
「………」




コク、とヘッポコ丸が小さく頷くと、破天荒はヘッポコ丸の口を解放した。途端に大きく呼吸を繰り返すヘッポコ丸を見ながら、破天荒は付着した精液を手の中で玩ぶ。これどうすっかなータオルとかは全部嬢ちゃんのとこだしつか俺もムラムラしてきたからこのままヤりてぇけどどうすっかなー…等と悶々と思考を巡らせていると、息を調えたヘッポコ丸から「このバカッ!」と雑言が飛んできた。忠告に従い、小声で。




「ひ、人が寝てるのに何してんだよ!」
「いや、寝れねぇから」
「一人で起きてろ! 俺を巻き込むな!」
「良いじゃねぇか。お前気持ちよさそうだったし」
「う、うるさい!」





自分に覆い被さったままの破天荒をポカポカ叩くヘッポコ丸の顔は、月明かりが微細にしか入らないテント内でも分かる程赤くなっていた。図星を突かれ、込み上げてきた羞恥心は、破天荒に更なる欲を与えるに十分な要因であった。




叩くのを止めないヘッポコ丸の手を汚れていない手で受け止め、そのままベロリと舌を這わせる。突然のことにピクリと反応を示すヘッポコ丸を見て、破天荒はほくそ笑む。




「最後までしたい」
「は…え…?」
「続行な」
「あっ!? ちょ、やっ…!」





有無を言わさず、破天荒は中途半端に下げられたままだったヘッポコ丸の寝間着を一気に脱がせ、精液に濡れた指先を後ろに触れさせた。




「ひっ…」





そのままツプ…指を侵入させると、ヘッポコ丸が引きつった声を上げた。精液だけでは潤いが足りないようで、なかなか指が思ったように奥に進まず、破天荒はやきもきしながら中を擦る。入り込んできた指を追い出そうとしてか、中は微細は収縮を繰り返していて、しかし追い出すに足らないその力は、指を締め付けてねだっているかのようにも思えた。





中で蠢く指にビクビクと身体を震わせながら、ヘッポコ丸は必死に声を押し殺す。なんて言ったって、すぐ隣では首領パッチと天の助がアホ面晒して眠っているのだ。さっきは破天荒が口を塞いでいたからなんとかなったが、今はその制限はされていない。よってヘッポコ丸は自分で声を抑えるしかなく、破天荒を拒絶したいのに、手を声の制御に使わなくてはならない。片手ずつで両方の作業をこなしたいが、片手で声を完全に殺せる自信なんて無かったし、片手でやめさせられる程、破天荒は優しくないのであった。





ここまできてしまったら、どれだけ拒絶したって破天荒に押し切られてしまうのは目に見えている。こんな場所で抱かれるのには相当な羞恥心を感じるけれど、そこはもう諦めるしかない。どうか首領パッチと天の助が起きませんように、声が漏れませんように、とただただ祈るのみだ。




「ん…んっ…」
「キツいなやっぱ。荷物を全部嬢ちゃんの方に置くのは間違いだな」





かりかりと内壁を引っ掻きながら、破天荒が呟く。潤滑剤が足りないことに対する苦言らしい。破天荒の荷物には当然のようにローションが入っているのだが、その荷物はビュティと田楽マンが使っているテントに置いてある。まさか取りに行くわけにもいかないので、破天荒は「よし」と一つの決意を固める。





「もう一回出せ、ヘッポコ丸」
「ふ…?」





快楽を与えられながら促された言葉に、ヘッポコ丸は意味が分からず閉じていた目を開ける。しかし一度まばたきをしている間に、破天荒が視界から外れた。



なに? と考えるよりも早く、ヘッポコ丸は自身が突然暖かい粘膜に包まれたことにより身体を跳ねさせた。零れた喘ぎは、自分の手の中で止まり消えていった。何事かと目線を下げれば、あろうことか、破天荒は後ろに指を入れたまま、ヘッポコ丸のを口淫していたのである。


ヘッポコ丸が認識したのを見計らってか、破天荒の舌がゆっくりと裏筋を辿り、その刺激に声が上がる。そこでようやくヘッポコ丸は、「もう一回」の意味を悟った。






潤滑剤が足りないからお前の精液を使う――と、つまりはそういうことだったのだ。





「んんっ…! っや…待って、はてんこっ…!」




思わず口から手を離して抗議の声を上げるが、破天荒は全く聞く耳を持たず、より一層口淫に集中する。全体に唾液を絡ませ、喉奥までくわえ込み舐めしゃぶる。もう片方の手で根元の袋も揉みしだくと、ヘッポコ丸はビクビクと身体を震わせ快感に悶える。下手に手を外してしまったことで、上がる嬌声を殺しきることが出来なかった。




「ひゃっ、あぁ…! っ…んんっ…ん!」





すぐさま口を塞ぎ直し、隣で眠る首領パッチ達を見やる。相変わらず寝入ったままの二人を見て、起こしてしまわなかったことに安堵した。




だが、安堵したのも束の間のこと。ヘッポコ丸が再び口を塞いだのをこれ幸いと取り、破天荒はラストスパートをかけ、過剰なまでの快楽を与える。くぐもった喘ぎを漏らすヘッポコ丸は、一度達したからか既に限界が近いらしい。それを感じ取った破天荒は、「出せよ」と言わんばかりにそれを勢い良く吸い上げた。





全てを搾り取られんばかりの吸引に、ヘッポコ丸はたまらず二度目の精を破天荒の口内に吐き出した。腰を通り抜けていく快楽に、指の隙間から抑えきれなかった喘ぎが零れ落ち、破天荒の耳を擽った。喉奥を叩くそれを零さないように気を付けながら、破天荒はすっかり力を失った自身を解放した。




「あ…はぁ…」
「ん…」





一端指を引き抜き、たった今吐精されたものを手の平に吐き出す。二回目とあって粘度の低いそれを破天荒はしばし指で弄び、それを十分に指に纏わせてから、なんの躊躇いもなく再び後ろへ指を伸ばした。新たな潤滑剤を得た指は、大きな抵抗を受けず侵入を果たすことが出来た。





達したことで弛緩していた身体に入り込んだ異物に、ヘッポコ丸は小さく悲鳴を上げて拒む。横たわったままの身を起こして破天荒を突っぱねようとするが、内壁を擦る破天荒の指は巧みにそれを邪魔し、ヘッポコ丸から快楽を引き出していく。知り尽くしたヘッポコ丸の性感帯を執拗に攻め、抵抗する余力を根刮ぎ奪う。




「ひっ…あぁっ…」
「おいおい、声がデカいぜ。おやびんやところてんを起こす気か?」






からかいを含む揶揄に、ヘッポコ丸はハッとして口を塞ぐ。二度目の絶頂を迎えた際、弛緩した手は無造作に布団に投げ出されたままだったのだ。せき止めることをすっかり失念していた声は、テントの中に響いてしまった。





チラッと横目で隣を見やる。幸い、二人を起こすことはなかったらしい。二人共相変わらず変わらない格好で、間抜けな寝顔を晒して寝息を立てていた。その寝顔を見て、ヘッポコ丸は息をつく。こんな醜態、二人に目撃されたらと思うとゾッとする。見られたが最後。もうみんなとはお別れだ。





「大変だなぁ」





ヘッポコ丸が慌てふためく様が面白かったのか、破天荒はクスクス笑う。お前のせいなんだよ! と睨んでみても、快感に潤んだ瞳では効果など無い。出来ることなんて、せいぜい二人を起こしてしまわないように声を我慢することぐらいだ。





ヘッポコ丸からの抗議などどこ吹く風状態で、破天荒は指の本数を一気に三本に増やした。そのままバラバラに動き出す指が前立腺を掠め、ヘッポコ丸の身体が仰け反る。ただ内壁を擦られるのとは違う、前立腺から伴う快楽はあまりに強くて…達したことで熱を失っていたヘッポコ丸自身は再び熱を取り戻し、すっかり反り返ってふるふると揺れていた。





破天荒の爪が前立腺を引っ掻く度、背筋を走る電流のような快楽がヘッポコ丸を襲う。先走りの蜜をこぼしながら、ヘッポコ丸は自分の奥深くがどうしようもなく疼いているのを自覚してしまう。あんなに拒絶していたのに。今だって、こんな所で抱かれるなんて嫌で仕方無いのに。







それなのに――




「ふっ……はてん、こ…」
「ん?」
「もう、我慢、できなっ…ねぇ、お願い…」






破天荒に抱かれ慣れた身体は、どうしようもなく破天荒を求めてしまう。湧き上がる欲求。深く破天荒を感じたいと、深く繋がりたいと、羞恥心をかなぐり捨ててまで思ってしまう。





口を塞ぐことをやめ、荒れた息を吐き出しながらヘッポコ丸は破天荒に手を伸ばす。破天荒は指を三本とも引き抜き、伸ばされた手を引いてヘッポコ丸の身体を引っ張り起こした。




「んっ…」
「我慢しろ。ほら、もうちょいこっち来い」




言って、破天荒はそのままテントの端まで移動する。されるがまま、ヘッポコ丸もそれに着いていく。愛撫を止められ、体内に残ってくすぶっている熱が辛くて、半ば縋りつくようにしてテントの端に辿り着くと、破天荒が寝間着の後ろポケットから何かを取り出した。





それがゴムであることに気付くのは容易かった。破天荒は包みを口で破り、寝間着の中で窮屈そうにしていた自身を取り出し、慣れた手付きでそれを装着していく。多分、後始末を簡略化するためだろう。外ではまだボーボボとソフトンが談笑しているだろうし、テント内には余分なタオルなども無い。汚してしまえば、それを隠滅することは難しい。その点を鑑みれば、ゴムを付けるのは正解だと言える。





破天荒自身のその質量に、そしてそれにゴムを被せる様子がひどく淫靡で、ヘッポコ丸はすっかり欲情して喉を鳴らす。これが、今から自分の中に押し入ってくるのだと、そう考えるだけで身体は歓喜に打ち震える。その先の快楽を知っているからこそ、もう抑制出来ない所まで熱を高められてしまった今、それを渇望して止まない。





「…そんな必死に見てんなよ、変態」
「っ…見てない」
「嘘つけ。まぁいいや。ほい、お前の番な」
「え…?」





座り込んでいたヘッポコ丸を膝立ちにさせ、そのまま足を跨がらせる。そうすると破天荒の自身が太腿に触れて、ゴム越しに感じる熱にヘッポコ丸は小さく声を漏らす。そして、自分の格好に気付き、羞恥に頬を赤く染めた。




膝立ちになったことにより、起ち上がって先走りの蜜を零す自身を惜しげも無く破天荒に見せ付ける格好になっていて、恥ずかしさに気が変になりそうだった。もうお互い隠している部分など無いと言うのに、何を今更――と破天荒は思うだろうが、それとこれとは話が別なのである。自分の身を余すことなく観察されていようと、恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。





たまらず自身を隠そうとしたが、破天荒はそれを許さなかった。




「こら、隠すな。お前の番だっつっただろうが」
「な、なにが…?」





その問いに対する返事は、行動で示された。いつの間にやら、破天荒の手にはもう一つゴムが用意されていた。それの包みをまた口で破り、今度はそれをヘッポコ丸の自身に被せ始めたのだ。





お前の番とは、つまり、そういう意味だったのである。




「ひっ…!」





実はゴムを被せられるのは初めてであるヘッポコ丸は、未知の感触に悲鳴を上げる。冷たいゴムが自身を覆っていく感触に身震いするが、それを快感に変化させてしまう皮肉な身体。ひっきりなしに先走りの蜜を垂れ流しながら、破天荒にしがみついて快感に耐え忍ぶ。破天荒はそんなヘッポコ丸が愉快で仕方無いのか、笑いを堪えながらゆっくりとゴムを付け終えた。





「は…うぅ…」
「どうだ?」
「…なんか、変…」
「まぁ、いっつもモロ出しだから違和感あるだろうな」
「ひ、人を露出狂みたいにっ…」
「冗談冗談。…んじゃ、挿れっぞ」
「え……や、待って! これじゃ、声、出ちゃっ…」
「問題ねぇよ」





言って、破天荒はヘッポコ丸の腰を少し上げる。そしてすっかり緩くなっているそこに、ゴムを付けた自身をあてがった。それだけでひくつく後孔は、破天荒を欲しがっている様を隠そうともしない――否、出来ないのかもしれない。破天荒はぐりぐりとまるで焦らすように自身を押し付けていたが…無意識であろうが、ヘッポコ丸がねだるように腰を落としてきたので、そのせいで呆気なく理性の糸は切れてしまった。







なんの前振りも無かった。破天荒はヘッポコ丸の頭を引き寄せ、その唇を自分の唇で強く塞いでから――容赦なく、一気に貫いた。





「!? ぅぐう!! んん〜〜〜〜っ!!!!」





衝撃に上がった悲鳴は、破天荒の唇に食われて掻き消された。根元まで一息に突き入れられた破天荒の自身はとても熱く、ゴム越しでもその熱さはありありと感じられ、ヘッポコ丸のナカを刺激する。身体が強張り、無意識にそこを締め付けてしまい破天荒を煽る。破天荒は唇を塞いだまま口角を歪ませると、荒々しく律動を開始した。






唇を合わせたままとは思えない強い腰使いに、ヘッポコ丸は破天荒の膝の上でただ揺さぶられるしかない。喘ぎも、悲鳴も、制止の言葉も、何もかも破天荒の唇に吸い込まれてしまう。時折息継ぎのために破天荒の顔が離れていくが、十分に息を吸う前にまた塞がれてしまうから、ヘッポコ丸は酸欠に陥りそうになりながら喘ぐのだった。




「ふぁ、ぅんんっ! んくっ…んんっ!!」





口内を舌で激しく犯されながら、ナカをぐちゃぐちゃに掻き回される。静かなテント内を、くぐもった嬌声と肌がぶつかる音と結合部が織り成す水音が満たす。いくら二人から距離を取っても、それらの音は消しきれない。その音量が果たして二人が起きない程度かと言われれば言葉に詰まる。二人の存在を抹消する程に理性を手放してはいないヘッポコ丸はなるべく声を上げないよう努めたが、どうしても無理だった。破天荒が手加減しないのだから、しょうがない。





「ふ、ぁん…うぅ…んっ、う…!」





ヘッポコ丸は必死に破天荒の舌に追いすがりながら、迫り来る射精感に耐えていた。ひっきりなしに破天荒自身の先端が前立腺を掠めていくから、既に限界が近い。ゴムに覆われた自身から溢れる先走りが、それを如実に表している。破天荒もとっくに気付いているのだろう、だから前立腺ばかりを狙い澄ませたように突き上げるのだ。





限界を訴えるために目を開ければ、涙で霞むその向こうで、欲に濡れた金色を見つけた。その瞳も、限界が近いことを静かに語っていた。行為の荒々しさとは裏腹なその静寂に詰まった欲の深さに、ヘッポコ丸は身体が痺れるのを感じた。耐えているはずの射精感が、一気に身体を貫いていくような…そんな感覚が身を包む。必死に我慢していたのに、もう、耐えられなくなってしまった。






破天荒は、そんなヘッポコ丸の機微に気付いたのだろうか。ヘッポコ丸が瞬きをし、その拍子に涙が一粒落ちたのを皮切りに、破天荒が抉るような腰使いで最奥を突いた。瞬間、ヘッポコ丸は目の前で火花が散ったような錯覚に陥った。それ程までに、それは強い衝撃だったのだ。








その衝撃に上がった悲鳴は、まともな音にもなっていなかった。ゴムに勢い良く放たれる飛沫。三度目になる絶頂のせいで、量はあまり多くない。それに伴う強い締め付けに、破天荒も小さく呻き声を上げて絶頂を迎えた。ゴムを介して感じる熱に、ヘッポコ丸はまた身を震わせる。いつもとは違う、異物に阻まれたそれに、一抹の不満を抱きながら。その不満に、気付かない振りを決め込みながら。









お互いに全てを出し切ってようやく、二人は唇を離していた。荒い呼吸を繰り返しながら、ヘッポコ丸は破天荒にしなだれかかる。背を撫でてやりながら破天荒はヘッポコ丸の肩口に吸い付き、紅い花を一つ咲かせる。小さな痛みに気付き、ヘッポコ丸が「あ、おいっ」と小声で咎めるけれど、破天荒はその紅い花を見て満足そうに笑うだけだった。






痕を一舐めして、破天荒はヘッポコ丸の身体を持ち上げて自身を抜いた。それにすら反応して声を出してしまう自分を恨めしく思いながらも、ヘッポコ丸は破天荒にされるがままになっていた。そうして全て引き抜いた後、破天荒はヘッポコ丸のゴムを取り外していく。未だ絶頂の余韻が尾を引いているため、破天荒の指が触れるだけで快楽の残滓が熱を孕む。





「んっ…」
「…その気になってもらっても、もうゴムねぇから無理だぞ」
「なってねぇよ! 不可抗力だ!」
「どうだか」





軽口を叩きながらゴムを外しきり、後始末を施してから自分のも外しに掛かる。またそれを直視しそうになったヘッポコ丸は慌てて視線を外し、乱れた着衣を整える。汗だくで不快感は否めないが、今外に出るわけにいかないから仕方無い。夜が明けたら川で水浴びをすることにし、不快感に蓋をした。




「どうすっかなーコレ…まぁいっか、埋めとこ」
「ん!?」





なんか聞き捨てならない言葉聞こえた! とヘッポコ丸がバッと振り向くと、あろうことか破天荒はテントの境目を少し破って地面を露出させ、そこに穴を掘っているところだった。片手で穴を掘りながら、精液で満たされたゴムを振り回している。




テント破んな! つかそんなもん振り回すなそれこそ破れたらどうすんだ! とヘッポコ丸が小声で責めるが、破天荒は聞く耳を持たず、充分な穴が空くとそこにゴムを放り込んでさっさと土を被せてしまった。ヘッポコ丸は破天荒の自由奔放さに頭痛を覚えた。




「これでよし」
「ああぁもう…明日誰かにバレたらどうするんだよ…」
「そん時はそん時だろ。ほら、寝ようぜ」





適当にも程がある。というか、寝れないからという理由で人を起こした張本人が何を言うか。ヘッポコ丸は頭を抱えたが、三度の絶頂により蓄積された疲労感で身体はひどくダルく、迫り来る眠気には抗えなかった。ハァ…と諦めの溜め息を吐き、自分の寝床でシーツにくるまる。破天荒も隣でシーツを被っていた。とても満足そうにしているのは、多分見間違いではないだろう。




「…もう何もするなよ」
「しねぇよ。さっき充分にしたからな」
「五回死ね」




ひっでぇと破天荒が笑っているが、ヘッポコ丸はもう聞いてはいなかった。目を閉じて、眠気に身を任せて夢の世界に足を踏み入れる。心地良い安息に身体を溶け込ませながら、破天荒が埋めたあれが見付からないことをもう一度祈っておいた。




ヘッポコ丸が寝息を立て始めたのを確認して、破天荒も目を閉じた。あんなに眠れなかったのが嘘のように、彼もすんなりと夢の世界に旅立っていった。








朝焼けが空を彩り始めたその時刻、一つのテントの中は、四つの寝息で満たされていた。

















スリル
(次同じことしたら別れるからな)
(なんだよ、お前だって楽しんでたじゃねぇか)
(百回死ね)





2014年最初の更新がこんな話ですいません…。いきなり脳内に浮かんできたから書くしかなかったのです楽しかった←



オチが適当だって? ほっといて←




栞葉 朱那

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