※ボボ屁前提


※多少いかがわしい表現有り


※救いなど無い














「…こんなことして、楽しいかよ…」




裸に剥かれ、下半身を白く汚したヘッポコ丸が、鳴きすぎたせいで掠れた喉で辛うじて吐き出した言葉は、果たしてベーベベにしっかり届いただろうか。少し離れた場所で乱れた着衣を整えながら煙草を吸うベーベベは、何も言わずに丸い月を眺めてばかりだ。人の気配がまるで無い森の奥深いこの場所では、どちらかが声を発さない限り、虫のさざめきや葉の擦れる音しかしない。故に、ベーベベがヘッポコ丸の言葉に答えないのであれば、辺りは静かな騒音で包まれる。





もとより答えを期待していなかったヘッポコ丸は、それ以上追求はせず、着替える為に身体を起こした。だが、無理な性行為を強いられたせいで身体はガタガタで、少し身じろいだだけでも痛みが走る。加えて、ベーベベが無遠慮に吐き出した白濁がナカから伝い落ちてくる感触が気持ち悪くて、まともに身体を動かせない。痛みと気持ち悪さに呻きながら堪える姿は、傍目から見るとひどく痛々しい。







そんなヘッポコ丸に一瞥もくれず煙草を吸いきったベーベベは、すぐに新しい煙草を取り出して火を付けた。月明かりが唯一の光源である森の中において、ジッポの炎というのは異様な存在感を放つ。火を付けたばかりの煙草を思いきり吸い込み、紫煙を吐き出す。ジッポの炎もそうだが、紫煙もなかなかに森にそぐわない。景観など気にしたことなど無いベーベベが、そんな違和感を気に留めることは無いが。





「楽しいか楽しくないかと聞かれりゃあ」





唇に煙草を挟んだまま、ベーベベは呟く。どうやら先程のヘッポコ丸の言葉はしっかり届いていたらしい。すぐに答えないあたり、ひねくれている。痛む身体を引きずりながら散らかされた服を集めていたヘッポコ丸は、その呟きに気付いて動きを止めた。





「楽しかったぜ、わりと」
「……そうかよ」





せっかくの答えだったが、『楽しかった』と言われたって、どう反応すべきか困ってしまう。問い掛けたのはヘッポコ丸だったが、答えなんて期待していなかったのだから、なんと返されても、どんな顔をしてそれを受け入れればいいのか──それが分からないのだ。








そもそも…強姦されたのに、『楽しいか』と聞いてしまったヘッポコ丸は浅薄であり、愚かだと言える。そんな聞き方をして、どんな答えを返されたって、自分が傷付く結果になるのは明白なのに。





「なんだ。せっかく答えてやったのに、冴えない返事だな」
「…楽しかったって言われて、俺が喜ぶとでも?」
「怒鳴り散らすと思ってたんだがな」





そう言うベーベベの口調には、僅かな驚きの色がある。初めこそ全力で抵抗し、拒絶や罵声の言葉を数多吐いていたヘッポコ丸なのに、事が終われば静かなもので、あんなちっぽけな問い掛けしか寄越さない。怒りを煽るような答えをわざとぶつけたのに、その反応は冷めたものでしかなく…。加害者であるベーベベが多少なりとも拍子抜けするのは、致し方ない。



ヘッポコ丸はベーベベのその言葉に多少思うところがあるのか、ふいっと視線を逸らす。そして、なるべく感情を読み取られないように努めながら、ポツポツと零す。





「怒ったところで、もう終わったんだ。何言ったって変わらないよ」
「じゃあ泣けばいいんじゃねぇの?」
「泣いたって一緒だろ」
「…お前、今までそうやって割り切ろうと頑張ってきたのか?」





淡々としたヘッポコ丸の受け答えに、ベーベベが核心を突くように言った。





「初めてじゃねぇんだろ、今回みたいに無理矢理ヤられんの」





その言葉は確かに、ヘッポコ丸の心を揺さぶった筈だが、ヘッポコ丸は少し肩を揺らしただけで、それ以上のリアクションは見せなかった(見せないよう努めた、と言うべきか)。だが、否定も肯定もしない、その些細な反応だけで、ベーベベは十分に確信出来た。ヘッポコ丸は、強姦されるのは初めてではない──と。








まだ長い煙草を足で揉み消し、ベーベベはヘッポコ丸に近付く。その足音に気付いたヘッポコ丸はベーベベを小さく睨んで威嚇するが、酷使され、傷付いた裸体を未だ晒している状態では、その威力など雀の涙。大した距離を取っていたわけでもなかったので、あっという間に接近してきたベーベベは、片膝をついてヘッポコ丸に目線を合わせる。







そして、ベーベベは囁く。ヘッポコ丸の虚勢を、脆くも打ち砕く言葉を。





「オレはお前にとって何人目の男なんだ?」
「っ…!!」





あまりに不躾なその言葉に、平静を装っていたヘッポコ丸も流石にカッとなったらしい。思わず振り上げた拳は、しかしベーベベにヒットする前に敢え無く捕まってしまった。





「怒ったってなんも変わらないんじゃなかったのか? 小僧」
「うるさい! お前に、俺の何が分かるってんだよ!」
「分かるわけねぇだろうが。オレは所詮、お前をボーボボから奪いたかっただけだからな」







『弟のモノは兄のモノ』──それがベーベベの掲げる思想であった。二十年前、故郷が滅ぶ以前から、弟であるボーボボにずっと言い聞かせてきた言葉だ。弟分である軍艦や破天荒にも、同様に示唆してきた。ベーベベの中で、『兄貴絶対主義』はその名の通り、絶対のモノだった。








だから、以前奪えなかったものをもう一度奪いに来た──ヘッポコ丸を無理矢理犯した理由に、それ以上もそれ以下も無い。なので、ヘッポコ丸が過去にどんな傷を負っていようが、ベーベベにはなんら関係の無いことなのである。









ひた隠しにしていた感情を剥き出しにさせたことに多少の優越感を抱きながら、ベーベベは捕まえたヘッポコ丸の拳に軽く唇を触れさせた。愛しさも慈しみも無い、ほんの些細な戯れのつもりだったが、ヘッポコ丸にとって不快以外の何者でもない。すぐさまベーベベの手を振り払い、ガタツく身体に鞭を打って後ずさる。





「やめろ!」
「そんな嫌がるなよ。済んだことは済んだことで全部割り切れるんだろ?」
「くっ…」





自分で吐いた言葉が自分を追い詰める。自縄自縛に陥ったヘッポコ丸に、ベーベベは手を伸ばす。その手は的確に喉を捉え、そのまま締め上げた。一瞬で呼吸を絶たれたヘッポコ丸が苦痛に呻く。その手を引き剥がそうともがくヘッポコ丸を、ベーベベは容赦の無い、無駄の無い動きで地に押し倒した。そのまま体重を掛け、少しの隙間も無くすように器官を圧迫する。





「かっ…は…」
「ついでだ、こんまま第二ラウンドといこうぜ。一回だろうが二回だろうが、もう変わらねぇだろ?」





酸欠に喘ぐヘッポコ丸を嘲笑うようにそう言って、ベーベベは締め上げていた手からふっと力を抜いた。弛めただけで未だその手は喉から離れないが、それでも正常な呼吸を許されたヘッポコ丸は、途端に入り込む酸素に激しく咽せた。そんなヘッポコ丸を後目に、ベーベベは空いている手を秘部に伸ばした。







先程出した白濁がヘッポコ丸のナカに残留しているので、指を侵入させることはあたりにも容易かった。グチュ、という水音を以て入り込んできた指に、ヘッポコ丸はびくりと身体を跳ねさせて引きつった声を上げた。





「ひっ…!?」
「こういうのはどうだ? お前が何回目でボーボボを忘れるか賭けるんだ。リミットは夜明け。それまでに忘れなかったらお前の勝ち。忘れたらオレの勝ちだ」
「う、あぁ…や…あっ…!」





ベーベベの提案はヘッポコ丸にとってなんのメリットも無いもので、到底飲める内容では無かった。必死に否定の言葉を紡ぐが、故意に前立腺を掠める指がそれを潰す。もとよりベーベベは、その否定を聞き入れるつもりは無い。提案した時点で、ベーベベの中でそれは既に決定事項なのである。







相手の…ましてや、危害を与えられる側であるヘッポコ丸の意見など、何の意味も持たない。





「楽しもうぜ。夜はまだまだ長いんだからな」





絶望と快楽の兆しが入り混じった表情でベーベベを見上げるヘッポコ丸の瞳には、涙の粒が光っていた。今にも零れ落ちそうなそれを見て、ベーベベはヘッポコ丸の心がいつ折れるのかを夢想した。夢想しながら、その身体を無理矢理暴いた。







途端に響く悲鳴を聞きながら、この悲鳴をもしボーボボが聞きつけたなら、すぐに助かるのにな…ご愁傷様──なんて、心にも無いことを思いながら、ベーベベはその矮躯を好き勝手に犯していった。










夜はまだ、明けない。















蟻地獄
(さぁ、早く堕ちて来い)
(骨の髄まで食らってやる)



賭けはへっくんが勝ちます。へっくんはずっとボーボボさんを呼び続けていたからです。ただ、そのせいで本当に夜明けまで解放されなかったのだから、皮肉としか言いようが無いでしょう。愛している人を信じ続けた故に、長く苦しむことになるのですから。



妹が最近ベーベベさんベーベベさん五月蝿いから書いてみたらこうなった。俺の中でベーベベさんのイメージはこんな人。ごめんねへっくん。




栞葉 朱那

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