※学パロ











破天荒は、自分がモテることを自覚している。なんて言ったって『ハジケ学園の王子様』と呼ばれて、女子達からモテ囃されているんだから。それで自覚しない方がおかしい。よっぽどの鈍感じゃない限り、自分の価値を見出すには十分な要素だ。





故に、クリスマスやバレンタインなどの行事は忙しい。と言うか、騒がしい。みんな破天荒に自分の想いを知ってもらおうと、これをキッカケにお近付きになろうと、あわよくば恋人になろうと躍起になる。中高一貫校であるため、俺はもう三年間、その喧騒を目撃してきた。女子達のその熱意に半ばウンザリしながらもある種感服してしまう反面、どうしても冷めた気持ちで見てしまう。









──だって。



破天荒は俺と付き合ってるんだから。





「毎回毎回鬱陶しいな全く」





なんの断りもなく生徒会室に入り込んできた破天荒は、我が物顔で備え付けのソファに寝転んだ。苛立ちを隠そうともせず、舌打ちを繰り返している。手ぶらであることを鑑みるに、誰からもプレゼントを受け取ってはいないらしい。





外からは破天荒を探す声が聞こえてくる。それに反応など一切示さず、俺は頬杖をついた。





「そう思うなら休めばって俺は何回も言ってるじゃん」
「お前が一緒にサボってくれんなら休むって俺も何回も言った」
「そのたびに俺は断ってるけどな」
「じゃあ俺も休まない」





お分かり? とおどけて言うもんだから、俺はこれ見よがしに溜め息をついてやった。学年が違う分、少しでも俺と長く入れる時間を確保したいんだって、前にコイツは言っていた。そんなことを考えてくれていることは素直に嬉しいって思うけど、そのせいで毎回学園から平和が奪われているのかと思うとやるせない。生徒会に籍を置く身としては、出来れば休んで欲しいと思う。







…俺個人の意見としては、来てくれた方が嬉しいけど。



公私混同はいただけない。




「プレゼントは?」
「あ?」
「今回もちゃんと断ってきたか?」
「直接渡してきたのは全部断った。机とかに入ってたのは捨ててきたぜ」





なんでもないようにそう言ってのける破天荒。俺と付き合う前から、コイツは他人様から貰った物を平気で処分している。酷い時は渡してきた本人の前でゴミ箱に放り込む。自分がモテることを驕ってのことかは知らないが、破天荒は『王子様』の異名には相応しくない冷酷さをまざまざと見せ付ける。





そういうのはあまり良くないと俺が諭してからは、プレゼントを受け取ることを止めた。どうせ捨ててしまうのなら、最初から受け取らなければいいだけの話だったのだ。だが、机とか靴箱に無断で入れられている物に関しては未だ遠慮なしに処分の方向らしい。









なんでこんな奴がモテるのか…そして、なんで俺はコイツが好きなのか…時々分からなくなる。






「せっかくお前にくれた物なのに、どうしてそんなあっさり捨てられるんだよ。少しは良心が痛まないの?」
「顔も知らねぇ奴から貰ったモンなんか気持ち悪いだろうが」
「分からなくもないけどさ…ハァ…なんでお前みたいな奴がモテるんだかな」
「じゃあお前は、なんで俺が好きなんだよ」
「…秘密」





俺は引き出しの中から、一つの赤い包みを取り出して破天荒に投げ渡した。寝転んだままの体勢で器用にそれを受け取った破天荒は、満足げな笑みを浮かべた。





「やっぱプレゼントは恋人からのに限るよな」
「無駄口叩いてないで早く食えよ。下手に誰かに見つかったりしたら、また前みたいに変な噂が飛ぶんだから」
「あん時言っちまえば良かったよなー。破天荒はヘッポコ丸と付き合ってますって」
「冗談言うなよ。そんな宣言されたら、俺もうここに居られなくなるだろうが」
「そしたら俺のとこに永久就職させてやるよ」
「バーカ」





徐にソファまで近付いて、破天荒に覆い被さるようにして唇を合わせた。破天荒は俺が渡したチョコをテーブルにしっかり置いてから、主導権を俺から奪ってキスを深くした。







扉の向こうから、また破天荒を探す女子達の声が聞こえてきた。気付かれてしまわないように静かに、だが荒々しく、互いの舌が絡まって卑猥な水音を響かせる。静かな生徒会室に響く水音と、外から入り込んでくる喧騒は、永遠に交わることは無かった。












ビターチョコレート
(少しは嫉妬してくれてもいいんだぜ?)
(もうし飽きた)



バレンタイン記念のくせに甘くない…だと…!? すいませんちょっと最低な感じの破天荒が書きたかっただけなんです出来心なんです許して!


モテる男はどれだけ理不尽な行いをしても許されると思っている――という独断偏見のもとこの話は仕上がっております。本来なら人から貰った物平気で捨てる奴はクズですから良い子は真似しないように。




栞葉 朱那

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