恋人らしいことっていうのが、口惜しいことにまだまだ子供な俺にはビジョンがあやふやで、手を繋ぐとかキスをするとか、そんな清いものばかりしか思い付かない。学生同士が恋人になったというのなら、こういう清いお付き合いで十分なのだろうし、幸せを実感出来るんだろう。お安い幸せだと思うが、身の丈に合った幸せなのかなとも思う。






学生ならば十分満たされるであろう、恋人同士の触れ合いとして形成される幸福。でも残念ながら俺は学生じゃないし、付き合ってる人は女の子じゃなくて男の人…ソフトンさんという名の、俺の師匠である人だ。












憧憬とも恋情とも取れる俺の心を、容易く懐柔して抱き締めて愛を囁いてくれたソフトンさん。ともすればキザだと思われてしまうのだろうその行動に、しかし俺は呆気なく落とされた。憧憬と恋情に揺れていた心の針は、呆れる程簡単に恋情に固定されたのだ。簡単すぎると思われたらグゥの音も出ない。だから今の所、俺とソフトンさんの馴れ初め(でいいのかな?)を公表したことは無い。話す機会が無いだけなんだけど。








そうしてめでたく恋人同士になれた俺達なんだけど、先に言ったように、俺が描く恋人らしいことは、あまりに清く稚拙なもの。…いや、勿論、この先の行為を知らないわけじゃない。別にそこまでピュアさを気取るつもりは無い。俺だって健全な男子だし。










ただ、俺とソフトンさんは男同士だ。その先の行為など、したくとも方法なんか分からない(いや俺がしたいとかそう思ってるわけじゃなくてただなんとなく考えちゃうだけで別に欲求不満になってるとかそんなの全然無いから)。だから、そういう行為を抜きにして考えた場合、あとはどういったことが恋人らしい…強いて言えば男同士の恋人らしいことなんだろうというのが、俺が抱えている悩みだったのだ。…現在俺が抱えている悩みは、そんな可愛らしいものでは無くなったんだけども。






抱えていた悩みが見事すり替えられたのは、丁度一週間前のことだった。




「ヘッポコ丸」
「なんですか?」
「お前を抱きたいと言ったら、怒るか?」
「………え?」





なんの前触れもなく落とされた爆弾。そう、これが、俺の今までの可愛らしい悩みを一掃する言葉…元凶だったのだ。








旅の途中。の、休憩中。木陰で二人でのんびり他愛無い話をしていた時、ソフトンさんはなんの脈絡も無く俺にそう聞いてきた。「修行しないか?」とでも言うように軽々しく放たれた言葉。言われている意味が上手く飲み込めず、俺の口から零れたのはあまりに間抜けな声。ソフトンさんはそんな俺を見て微笑し、「つまり」と言葉を繋げた。





「お前と一つになりたいと言っている」
「ひ、ひと…つ…って、えと…」
「分かりやすく言うならセック」
「うわああああ言わなくて良いです!!」
「むぐっ」






俺は慌ててソフトンさんの口を塞いだ。ソフトンさんの口からセッ………クス(小声)とか、聞きたくない!





というか、もう十分だ。もう十分理解出来た。理解出来過ぎて顔が熱い。なんで、なんでそんなことを今ここで? 今お昼ですよ? そんなアダルティな会話をするにはあまり相応しくない時間ですよソフトンさん。いやいやそれよりも、ソフトンさん、俺を抱きたいって言ったよな? え、じゃあ俺が女の子役? あああ嘘だろ誰か嘘だと言ってくれ! いやまぁ体格とか経験値とか考えたら妥当なんだろうけど…でも絶対恥ずかしいって恥ずか死ぬってどんなことされちゃうのか朧気にしか分かんないけどそれでも恥ずかしいってことは分かってるよ! ああでもでも俺がソフトンさんを抱くとか考えられないしそもそも方法が分かんない…し…。











バカみたいにグルグルと回りすぎてオーバーヒートを起こしそうになっていた思考は、ある一点でピタリと動きを止めた。あぁそうだ、そうだった。うっかり忘れていた。そもそも俺が清い付き合い方ばかり思い浮かべていたのも、それが原因だったじゃないか。










やり方が分からないんだから、出来るわけがない!(なんでそんな誇らしげなんだというツッコミは受け付けない)











その結論に至った俺はソフトンさんの口元から手を離した。どうして口を塞がれたのか分からなかったのか、ソフトンさんは少し不思議そうな顔をしていた。





「ソフトンさん」
「なんだ?」
「あの、やり方とか…」
「大丈夫だ、既に知識はある」
「ああそうなんですか!」





流石ソフトンさん! 勉強家ですね! …ってそうじゃなくて!





「い、いつの間に…」
「気にするな」
「気にしますよ!」





いや本当に、一体いつそんな知識を蓄えたのだろうか…。最近は街にも立ち寄ってないし、自由になれる時間なんてこの団体行動の最中じゃほとんど無いのに。…ま、まぁ、情報源が何処かどうかは、この際置いておくとして…。








じゃあ…するんだ、俺。ソフトンさんと…セッ…。







「〜〜〜っ!!」







ソフトンさんに抱かれてる自分を想像したら憤死しそうになった。なんで想像しちまったんだ俺のバカ。顔が凄く熱い。きっと今の俺は、みっともないぐらい顔を真っ赤にさせてしまってるに違いない。あああ恥ずかしい。穴があったら入りたい。






恥ずかしくて俯いてると、不意に頭を撫でられた。ソッと顔を上げると、ソフトンさんがなんとも複雑そうな笑みを浮かべながら俺を見ていた。俺の髪を梳く指は、とても優しいものだった。





「そう深く考えるな。方法は調べたが、早急に事を進めたいわけじゃない」
「ソフトンさん…」
「お前が嫌だと思う内は、押し倒したりしないから安心しろ」
「お、押し倒っ…!?」





お願いしますからサラリと言わないで下さい心臓に悪いんです!





「その気になったら、いつでも言ってくれ。俺はそれまで、待っている」
「え、あ…あ、あの…」





その気になったら言えって…え、それって、俺から誘えってことですか? その気になったからやりましょうって誘えってことですか? そういう意味なんですか? …か、かかか勘弁してくださいそんな恥ずかしい真似させないで下さい! だったら問答無用で押し倒された方がまだマシですよ!









――という抗議の声は、タイミング良く(悪く?)掛かったボーボボさんの集合の声に掻き消され、音になること無く霧散してしまった。ソフトンさんは話は終わりだとでも言いたげに足早にボーボボさんの元に向かってしまい、取り残された俺は一人百面相している所を天の助に発見されるまでその場から動けなかった。






以上、これが一週間前に起こった、現在俺が悩みまくるキッカケとなった出来事でした。








「うぅぅ…」
「ヘッポコ丸、さっきから呻きすぎじゃないか?」
「うぅぅ…だって…」






あのソフトンさんの爆弾発言から一週間。相変わらず旅は続行中。既に日も暮れて、俺達はちょうど良く見つけた宿屋に入っていた。ボーボボさんが作った公平なあみだくじにより、今日は天の助と同室。そして俺は部屋に入ってからずっと、ベッドを一つ占領して呻き続けていた。悩乱の原因はただ一つ、一週間前のソフトンさんの言葉だった。







最初は何も聞いてこなかった天の助だったけど、流石にもう無視は出来なくなったらしい。繕っていた[ぬ]のハンカチを置いて、俺のベッドに乗り上がってきた。





「最近ずっとそんな調子だよな。何に悩んでるんだ? 俺で良ければ相談に乗るぜ?」
「………いや、大丈夫」
「でも悩みすぎもよくないぞ? 話聞くだけでもしてやるぞ?」
「大丈夫だから。本当に…大丈夫だから」






まさか「ソフトンさんとのセッ…クス(またしても小声)(平然と言える程俺の心は強くない)に悩んでる」なんて、いくら親友相手とは言え口が裂けても言えない。けど、こんなあからさまに悩んでますオーラを出してたら気にされるのは当たり前だ。だから天の助の申し出は至極真っ当。しかし俺にとってはただただ有り難迷惑でしか無い。だから頼む、ソッとしててくれ。俺一人でちゃんと解決するから。





「んー…ヘッポコ丸が言うならあんまり強く聞かねぇけど…悩みすぎんなよ?」
「うん…ありがとな、天の助」
「良いって。あ、そうだ、お茶でも煎れてやろっか? ところてん茶があるんだけど」
「いやいらない」
「ちっ…じゃあ普通の煎れてやるよ」






最初からそうしてくれという言葉を飲み込み、俺は天の助と一緒にテーブルに移動した。この部屋にはインスタントの緑茶がポットと湯飲みとセットになって置かれている。天の助はその緑茶を煎れてくれるようだ(ところてん茶に興味はあるが、飲みたいとは思えない)。



ま、悩みすぎててもよくないという天の助の言葉は尤もだ。ここはお言葉に甘えて、少し頭をリラックスさせようと思う。






「にしても、あれだな」
「なんだ?」




いそいそと湯飲みに緑茶の粉を入れている天の助が、不思議そうな声音で言った。





「ソフトンとのせっくすについて悩んでるんだと思ってた」





俺はテーブルに額をぶつけた。どうやら俺にリラクゼーションタイムはなかなか訪れてくれないらしい。




ガンッ!! と案外良い音が鳴ったためか天の助が「なっなんだ!?」と素っ頓狂な声を上げた。それはこっちの台詞だこの野郎っ…!!




「どうしたんだヘッポコ丸?」
「て、天の助…お前今なんて言った!?」
「え? えー……ソフトンとのせっくすについて悩んでるんだと」
「なんでお前がそれを知ってるんだ!!」
「あ、やっぱそうなの?」





やったー天ちゃん大正解ーと無邪気に喜ぶ天の助を一発ぶん殴る。心の半分以上を占める羞恥心が反射的に手を出させたのだった。


…というか、俺自分で肯定しちゃったよ。うぅくそ…穴があったら入りたい…(二回目)。





「ううぅ…」
「ど、どうした? 具合悪いのか?」
「全然違う……なぁ天の助」




恥ずかしさを押し隠し、俺は天の助に向き直る。





「本当になんで、俺がそれに悩んでるって分かったんだ?」
「ソフトンが言ってたんだよ」
「え? …ソフトンさんが?」
「おう」






湯気が立ち上る湯飲みを俺の前に置きながら、天の助は肯定する。






「前の宿にパソコンが置いてあったろ? ソフトンがそれを使ってんのを見てさ。何してんのか聞いたんだよ。そしたら、せっくすのやり方について調べてるって教えてくれてさ」





何バカ正直に答えてるんですかソフトンさん! てか、そんな所で調べてたんですか!? 堂々としすぎだろ! 見付かったのが天の助で逆に良かった本当に!!






これがボーボボさんや破天荒だったらと思うとゾッとする。ビュティさんなんて以ての外だ。もしバレたら俺はもう彼女と顔を合わせられなくなる。




「なんでそんなん調べてるのかと思ったら、お前の為だって言ってたぜ」
「え…」
「お前のこと大事にしたいから、下調べを怠りたくないんだって」








『その気になったら、いつでも言ってくれ。俺はそれまで、待っている』









不意に、ソフトンさんの言葉を思い出した。あの時は恥ずかしさばかりが先立ってしまったけれど…あの言葉は本当に、俺を慮っての言葉だったんだと、ここに至ってようやく気付いた。俺が望まないなら、強要しないと…あの人は真っ向から、そう言ってくれていたんだ。








大事にされている。愛されている。その自覚が無かったわけじゃない。でも…その自覚はあまりに小さかったのだと、やっと分かった。













心が暖かい。それを凌駕するのは頬に差す熱。恥ずかしさと喜びが綯い交ぜになって、どうしたら良いのか分からなくて、思わずテーブルに突っ伏した。天の助が心配そうに俺の肩を叩いてきているのが分かったけど、すぐにリアクションを返す気にはなれなかった。














――何を悩む必要があったんだろう。










この一週間、俺が頭を悩ませていたのは、そういう…身体を重ねるという行為をしたことで、ソフトンさんに幻滅されまいか…この一点についてのみだった。






きっと、霰もない痴態を晒してしまう。みっともない姿を晒してしまう。それを目の当たりにしたソフトンさんが、もしかしたら幻滅して愛想を尽かすかもしれない。そう考えると、どうしてもソフトンさんに身を預ける決心がつかなかった。先に進みたいと願っていたのに、いざ手を差し伸べられたら掴むことに躊躇してしまったのだ。




この一週間、ソフトンさんはそれについて何も言ってこなかった。あの言葉通り、俺がその気になるまで待ち続けるつもりなんだろう。それがいつになるかも分からないというのに、ソフトンさんはなんの催促もしてこない。悶々と悩み続ける俺を、寧ろ暖かく見守っているのかもしれない。









俺を抱きたいと言って、知識も既に得ているのに、強行しないのは…俺の気持ちがソフトンさんと同じ土俵に立つのを、待ち望んでくれているからか。彼の心は、一体どれだけ広いのだろう。







そんな人が、俺の痴態を目の当たりにしただけで、果たして愛想を尽かしてしまうだろうか? 一週間考え続けてきたことだったけど、今ならその答えが見付かりそうな気がした。








正直、結局自分で方法を調べていない行為に対して恐怖心も羞恥心も抱いていないと言えば、それは嘘になる。でも、もうそんなことを言える段階では無いのだ。そんなもの全てかなぐり捨てて、あの人に身を委ねる覚悟を、固めなければならない時だ。




「ヘッポコ丸ー?」
「…うん…ありがとう。…もう大丈夫」
「大丈夫って? なにが?」





俯せていた顔を上げて、天の助に一つ頷いてみせる。天の助は上手く理解出来ていないようだったけど、あまり深く聞いてはこなかった。天の助なりにどうとでも解釈したのだろう。





俺は少々冷めてしまった緑茶を一口飲んだ。久しく口にしていなかった独特の苦味が鼻に抜け、それになんだかホッとする。少々冷めたことで程良い暖かさになったようで、喉を通る温もりは心地良い安心感を与えてくれた。




「悩み事は終わったのか?」
「…うん」
「そっか。じゃあちょっと聞きたいことあるんだけどいいか?」
「なんだ?」
「あのさ、せっくすって何?」
「………」





どう説明したら良いのか、俺はこの一週間以上に頭を悩ませることになった。


……っていうか知らずに踏み込んできてたのかよ!


















「悪い、待ったか?」
「いえ」





その日、食事が終わってからソフトンさんを外に呼び出した。無論、固めたばかりの決心を話すためだ。






話すにあたり、内容が内容なだけに、周りに誰もいない場所が望ましかった。仲間の数が多いから宿内で話に講じたら誰に目撃されるか分からない。だったら宿を出てしまうのが最も安全だと考え、俺達二人は月明かりに照らされる中で対峙していた。





「歩きながら話そう。誰が沸いて出て来るか分からないからな」
「ふふ…はい」




沸いて出てのフレーズに軽く笑いを零してから、俺達はゆっくり歩き始めた。四方を木々に囲まれているこの宿は辺りに民家も無くて、聞こえるのは川のせせらぎと風に揺らされた葉の擦れる音だけだ。夜行性の動物達はいないのだろうか、生き物の気配は全く感じなかった。





お互い無言のまま、しばらく木々の隙間を縫うように歩いた。犇めくようには立ち並んでいない木々の葉の隙間を月光が突き抜け、明るいそれが地を照らしてくれている。木にぶつかる心配も、道に迷うことを懸念する必要も無かった。






「その気になってくれたか?」






沈黙を破ったのはソフトンさん。その声音はあくまでも穏やかだった。確認された内容は、あまり穏やかではないのだけど。





「…はい」





小さく、だけどしっかりと俺は肯定する。そもそも、それを伝えるためにわざわざ二人っきりで出て来たんだから。






ここまで来て、今更後込みなんてしない。決心を鈍らせもしない。そんなの、一週間待ってくれたソフトンさんに失礼だ。







俺の返事を聞いて、ソフトンさんの表情はあからさまに弛んだ。小さく吐息を漏らしたところも見ると、どうやら…安心した、らしい。





「呼び出された時点で内容は察していたが、断られたらどうしようかと思っていた」
「…不安にさせてしまってたなら、すいません…」







小さく頭を下げる。一週間なんて短いと思う人が大半かもしれないけれど、きっとソフトンさんからすればこの一週間は長かったことだろう。俺が凄くくだらないことで悩んでる間、ソフトンさんはきっと気が気じゃ無かった筈だ。俺が拒絶する可能性なんて、十分に想定出来ただろうから。






それでも急かすことなく待ち続けてくれたのは、俺を信じてくれていたからだろう。応じてくれるって…信じてくれていたからだろう。





「謝ることはない。先を望んだ俺が悪いんだからな」
「…悪いことじゃありません。先を望んだのは、俺だって同じです。だから、返事をしたんです」
「だが、俺が滅多なことを言わなければ、お前は先を望まなかったんじゃないのか?」
「それは…えと…」






まさか「ずっと望んでたけど全然言い出せませんでした」なんて言えるわけもなく、どう答えたらいいものか分からず首を捻る。もうここまで来てしまったらぶっちゃけてしまっても良いような気もするが、如何せん心にこびり付く羞恥心は俺の邪魔をする。恥も外聞もかなぐり捨ててしまえたらきっと色々楽になるんだろうけど、自分の性分とはなかなか直せないから厄介だ。






うんうん唸る俺を見かねてか、ソフトンさんは少々乱暴な手付きで俺の髪をかき混ぜた。思考が途切れ、俺はぱちくりと目を瞬かせてソフトンさんを見た。ソフトンさんは珍しく、笑いを堪えているようだった。





「あ、あの…?」
「ふふ…すまない。意地の悪い質問だったな」
「え…あ、いや別に…って、からかったんですか!?」
「そんなつもりは無かったが、結果的にはそうなったな」
「…単純ですいません」
「そこがお前の良いところだ」





髪を撫でていた手が前髪を掻き上げ、露わにされた額に柔らかな感触が一瞬。それがソフトンさんの唇だと分かるのに数秒掛かった。







離れていくソフトンさんは、さっきまでとは違って、凄く愛おしいものを見るような目をしていた。透き通るサファイアの目はとても綺麗で、思わず見とれてしまう。あぁもう、なんだってこの人はこんなにカッコいいんだろう。心臓が五月蝿いぐらいに脈打ってるのが分かる。なんだろう、この胸の高鳴りは。





「…ソフトンさん」






無意識に動く自分の唇。震える声帯。紡がれる言葉。







「俺を抱いてください。身も、心も…全部全部、あなたのものにしてください」




本当に意図せず、そんな言葉が溢れ出た。本心をこうも簡単に吐露できるとは、俺の羞恥心のリミッターはいよいよ狂い始めたのだろうか。






ソフトンさんはやっぱり笑顔だ。今の俺の言葉が、よっぽど嬉しかったのかと予想し、恥ずかしいけど言ってよかったと思えた。ソフトンさんが嬉しいと、俺も嬉しい。







「嬉しいお誘いだな。…だが」






両頬に添えられたソフトンさんの手。少しだけひんやりとした両手が、熱を孕んだ俺の頬をゆっくり冷やしていくようだ。




人間の手は、緊張すると体温が少しずつ下がっていくものらしい。もしかしたらソフトンさん、緊張してるんだろうか。俺を抱くという行為に。







「初めてお前を抱くなら、誰にも邪魔されない場所がいい。宿だと、気兼ねなく出来ないからな。だからと言って、外で済ませるつもりもない」






だから、とソフトンさんは続ける。






「次の街に着いたら、別行動を取らせてもらおう。誰にも邪魔されない場所で…一つになろう」







…いちいち言うことが気障というか、恥ずかしいというか…直球過ぎて俺は恥ずか死にそうになる。なんで素面でこの人はこんなことが言えるんだろうか。俺には到底真似出来ない所行だ(さっきの台詞も大概だというツッコミは以下略)。







でも、その提案に異存は無い。俺は小さく一つ頷いて、ソフトンさんの顔を引き寄せた。なんの抵抗も無く重なった二人の唇。次の街に着くまでは…キスで我慢することにしよう。








「…手加減、してくださいね。俺、初めてなんですから」
「お前が俺を煽らなければな」













お楽しみは後程
(俺好みに開発するから覚悟しておけ)
(本人に宣言しないでくださいよ!)





俺がソフ屁書くとへっくんが盛大にデレるから困ります。早く初夜迎えればいいのにこの野郎。へっくんが天の助になんて説明したかは想像にお任せします。




続きなんて考えてないよ←







栞葉 朱那

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