短編集

□精一杯の言葉
1ページ/2ページ

私には、ずっと気になっている先輩がいる。
この感情が"好き"なのか"憧れ"なのかはまだわからないけど。


きっかけは些細な事だった。

私の学校で学園祭をやるとき、偶然、同じ役割になったのだ。

他にも同じ役割の人は沢山いた。

先輩も、同期も、後輩も。

なのに、何であの先輩なのか、自分でも分からない。



優しくしてくれたって言うのもあると思う。

仕事がはかどらない時は手伝ってくれたし、重い荷物は手分けして運んでくれた。


けど、それだけでは


なんか足りない気がする。
それだけの理由では


ありきたりな気がする。



"好き"に理由なんて無い。
何かの本に書いてあった言葉。
それと同時に
友達から教えられた言葉。

――この気持ちを表せる言葉を、先輩に聞きに行ったら?


正直、乗り気じゃなかったけど
これが最善の策、なのかな…?



「どうしたの?いきなり」
学園祭は終わったよね、と先輩は続けた。

「先輩に聞きたいことがあるんです」
「聞きたいこと…?」


黙れ、心臓。

あんまりうるさいと先輩に聞こえちゃうでしょ。


「私、学園祭準備中、すごく楽しかったんです。
普段関われない人たちと話ができて。

先輩も、その一人で。
けど、こんなに呆気ないんですかね…

前みたいに、先輩と関われなくなったら、急に寂しくなってきました。


妙に胸が苦しいんです



先輩。
この気持ちは、何て言うんですか?」


お願い。
どうか、黙っていないで。
何でもいい

あなたの声が聞きたい。



「奇遇だね」

「…え?」
「俺も、そう。
同じ気持ちなんだ。」


「友達に聞いたら、それは


"恋"なんだって


俺は君が好きになったみたい」


「ほら、君の答えは?
自分の言葉で俺に聞かせて」


そんなの
決まってるじゃないですか。


先輩…

「大好きですっ…」


私、伝えたよ

自分なりの、精一杯の言葉で。





おわり
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ