小説

□地下のゴミダメの底から
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地下街。
人間のゴミダメのようなこの場所に俺は生まれた。

淫行・暴力・殺人・強盗。
普通ならば罰せられるべき行為であるこれらももはや日常茶飯事である。

このゴミダメから去ることになるのは、生まれてから十余年後。
リヴァイは15にして地下で有名なゴロツキであった。
他者を寄せ付けない孤高の猛者である。当然無法地帯である地下街では
力のある者が頂点である。

弱肉強食である。

そんな暗黙のルールはここ、地下街では3歳でも知っている。
そこで、地下街最強の男はある少年と会う。

ゴミが山のように積んである酷く汚く腐臭漂う場所で二人は出会った。
頭部からは夥しい量の血を流し、ぐったりとゴミ山に埋れていた。

ちょっとした好意でその少年を掘り起こしてやったのがそもそもの発端である。

「おい、クソガキ。」

首根っこを掴みゴミ山から引きずり出してやると10歳くらいの少年は金色のギラギラした目でリヴァイを睨みつけた。

その瞳を見ているとなんだか幼い頃の自分を見ているようで
たまらなくゾクゾクした。

「なんだよ!はなせよっ!」

少年はふところからナイフを取り出しブンブンを振り回した。
ナイフ自体避けるのは容易いのが掴んだ少年を離してはこんなゴミ山の上だ。
転げ落ちて大怪我をしてしまうだろう。
そう思うと手を離せなかった。

ブシュッ!

「あっ......!」

「チッ.....」

少年のナイフが左腕に刺さった。大して傷は深くないが出血量は少年を
驚かすには十分な量で、
少年をゴミ上に下ろして止血を試みた。

「あ....ごめん....ごめんなさい!!しけ....止血....!」

予想以上に慌てふためく少年にクスッと笑った。
普通ならば地下街の人間ならそのままトンズラをかますだろう。

「え...?痛くないのか?」

しかし、こいつがいい奴なのと礼儀がなってねえのは関係ない。

ガシッ

「ふえっ?!」

頭を掴むとギリギリと力を込めてやった。
それから逃れようと必死にもがくが、所詮子供の力。リヴァイには及ばず、

「いたたたたたっっ!!」

「おい、クソガキ礼儀がなってねえぞ。敬語だ、敬語」

「はいっ!ごめんごめんなさい!」

潔く無礼を詫びたため今回はこのくらいにしてやろう。
パッと手をはなしてやる。

「クソガキ、てめえ俺と一緒に来るか?」

「え?」

「俺がてめえを引き取ってやるって言ってんだよ。」

「え.....あ.....うっ..................」

少々悩んだ末、少年は笑顔で返事をした。

「はい、リヴァイさん!」

「あ?なんで俺の名前知ってんだよ。」

「え?だってリヴァイさん地下街じゃ有名ですよ?」

「ふーん.....つーかてめえ、名前は?」

「エレンです。よろしくお願いします!」

「そうか。」


それから5年。
リヴァイとエレンは一緒に地下街を生き延びてきた。
それこそ木の根を食い泥をすするような。過酷な日々であった。

「リヴァイさーん!パン分けて貰いましたよ〜!」

エレンはとびきりの笑顔で両手にパンを持ち、たたたっと走ってきた。
会った頃とは大分容姿も大人に近づいてきたエレンはもう15歳である。

「つーか、分けて貰ったじゃなくて盗んできた。だろう?」

「えへへ....はい!」

パンを受け取ったリヴァイは5年前の強靭な体にさらに磨きをかけ、
いまや、人類最強と地下街で名前を轟かせている。

「ほーいえは、はっきれすれえ!」

「汚ねえな、食ってからしゃべりやがれ。」

エレンが行儀悪くパンを口に入れたまま会話を続けようとしたのを
リヴァイに指摘されすぐに飲み込んだ。

「んむ、そーいえばさっきですね!内地の奴ら....えーっと.....けんぺい?あれ....兵士?だったけかな?
まあ、兵士的な人たちがリヴァイさんを探してたんですよ?何かしました?」

内容は至極真面目なのだがニヤニヤしながら聞いてくるあたりこいつも
黒くなったものだ。

手に持っていたパンを口に放り込み、飲み込んだ。

「何もしてねえよ、人を犯罪者みてぇに言いやがって.....」

「ははははっ」

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