テニスの王子様2

□炭酸
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「おぅーい、しってるかぁ!?
“たんさん”ってほねがとけるんだぜーー!!?」

朝からうるせぇなガキが。
電車に乗る小学生達は、俺が今日夜更かしして眠くてクソ機嫌悪いことを知らないのをいいことにぎゃあぎゃあどうでもいいことを喚いている。
俺はそいつらを白い目で眺めていた。
炭酸で骨が溶ける?
自慢にもなんねぇよ。
そう思って見下げていたが、まぁそれも俺が中学生だからだ。
小学生の時は、俺もそんなこと言ってた気がする。
電車であんな大声では言ってねぇけど。

でも、骨が溶けるかぁ…
骨が溶けたら、人間は身と皮だけになってしまう。
例えば、愛する人が、炭酸の飲み過ぎで身と皮だけになったら?
日に日に少しずつ溶けてく恋人。
少しずつ、俺のことが分からなくなってく恋人。
少しずつ、俺の名前を呼べなくなってく恋人。
そして立てなくなって、ベッドから離れられなくなって。
俺は学校もそっちのけで恋人の家に入り浸って。
恋人は、虚ろな目で俺に弱々しく笑いかける。
そのうち目も溶けて、骨も溶けて、ぐちゃぐちゃになって。
肉と皮だけになって、恋人が人じゃなくなって。
俺は絶望するんだ。
希望を打ち砕かれるんだ。
それでもなお、俺は恋人の面影を探すんだ。
どろどろに溶けた恋人の肉片を拾って。
恋人の髪を掴んで。
抱き締めて、キスして、俺の中に流し込んで。
俺と恋人は同化するんだ。

ぞくぞくっ、と甘い響きが身体を駆け回る。
やばい、勃起した。
えろすぎる。
俺は足と足を摺り合わせると、学校までの道を急いだ。
…今度、先輩に炭酸奢ってあげようかなぁ…。
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