長い話

□1話
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「おっちゃ、ん!もぉいっぱい!」

「ヘイヘイ。…お客さん、もう止めにしときなよ」

「ぅ、るせ…っ…ぅ、うう…っ」

「あーもー…また泣いちまった…」

俺、丸井ブン太。
只今、3年も付き合ってた恋人に突然フられ、やけ酒をしている。
だけどさすがに一人も飽きてきたなー…
そう思った俺はおぼつかない足取りでさっきから一人で飲んでるお客に絡みに行く。

「なぁ、そこのひと!おれっ、3ねんもつきあって、たのにふられたんだぜ?…しんじ、らんねぇだろっ…」

店内には偶然にもそのお客と俺しか居なくて、俺の声がよく響いた。

「ちょっと、お客さん!他のお客に迷惑は…「あぁ、いいっすよ。気にしなくて」

「おれ…すっごい、すきだった、のにぃ…っ」

とにかく誰かに聞いて欲しかった。
自分の想いとか、悔しさとか、怒りとか。
俺は、こんなにもあいつを好きだったのに。
あいつはただ一言、『飽きた』と言い捨てた。
確かに、俺はホモだ。
あいつはそうじゃない。
俺に手を出したのはきっと好奇心。
でもね、付き合ってるとき、優しくしてくれて、人の体温に触れれて。
本当に嬉しかったんだ。
受け入れられることはないと分かっていても、本当の恋人になったと錯覚して、嬉しかったんだ。

「…それは大変だったっすね。よし、俺もやけ酒つき合いますよ。
店長さん、生中おかわり」

「…あいよ」
















…と、そこまでが昨夜の記憶だ。
そこからの記憶が一切無い。
酒が弱いのに無理して酒なんて飲むからだ。
ずきずきと痛む頭からもそれは推測出来た。
じゃあ、これは? 












どうして、目を覚ましたら、知らない男と裸で眠ってるの?





「…ん」

ふと、男から寝息が漏れた。
やばい、俺昨夜何があった。
どうして裸なんだ。
そして、ここはどこだ。
いろんな疑問が頭の中を駆け巡る。
とにかく、今は。

逃げるしかない。

「…ぁ、ん…っ…起きました?」

妙にエロ…じゃなくて、声がした。
起きてしまった、男が。
俺はすぐさまそこに落ちていた服を拾うと装着する。

「…ぉ、れ…ごめんなさい!」

そして、走った。
男は後ろから何か言っていたが、一切聞かなかった。

外へ出てみると、なんとなく見たことある所だった。
記憶を手繰って、なんとか家へ帰る。
そう言えば、お酒のお金どうしたのかな…と素っ頓狂なことを考えながら。

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