長い話
□story7
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o。◯。1ヶ月後o。◯。
「いらっしゃいませナリ。比呂士」
「こんばんは、ニオウさん」
私達は、相も変わらず恋人と云う関係を続けています。
私がバーに来るととても嬉しそうにするニオウさんを見て仕事の疲れを癒やしているのです。
「じゃあ、いつもので」
ここ最近はニオウさんが私のために作ってくれた『olive』を飲んでいるのでいつものと常連気取りの注文も許されるのです。
何より、ニオウさんの作っている姿を見るためですがね。
私のために…と思うと自然に顔が緩んでしまいます。
「お待たせしましたぜよ。
いつものじゃ」
すると、ニオウさんが私の手に触れた。
それだけで、頬が熱を帯びる。
「ありがとうございます」
ニオウさんに近付きキスをすると、たちまちニオウさんは慌てていた。
可愛いにも程がありますね…。
こんな顔、仕事中には出来ないな。
私も顔を引き締め直すと、一口お酒を飲みます。
そして、ニオウさんと様々な話をするのが、日課となっています。
「私、社長秘書してるんですけど…やっぱり大変ですね。
仕事中はずっと気を引き締めなくてはなりませんから、こんなに老け顔になっちゃったんですよ」
「比呂士は社長秘書をやっとるかの?
かっこええのぅ、俺とは大違いじゃ。
大丈夫じゃよ、比呂士は老けてなんかないナリ」
「また上手いこと言いますね。
ニオウさんだってここの仕事様になってるじゃないですか。
仕事は、人を選びますよ。
ニオウさんはとっても似合ってます。」
「そう言われると照れるのぅ。
でも、比呂士と同じ場所で働いてみたいもんじゃ。
楽しそうやのぅ」
「こら、楽しくなんかありませんよ。
社長は良い人ですけど、やっぱり怖い人がたーっくさんですから。」
「ふーん…
まぁ、仕事も転機やから、夢見るだけでもええやろぅ?」
「転機って…全く、ニオウさんは。」
こんな調子で喋れるのも、きっとお酒のお陰だ。
普段の私はこんなに自分の思ってることを話さない。
きっと、心許したニオウさんだから。
こんなにも簡単に話せるでしょうね。
でも、あまり口が過ぎるといけません。
明日も仕事がありますし、今日は帰りますかね。
「では、帰りますね」
「…比呂士、仕事がんばれ」
「その言葉だけで一週間は頑張れますよ」
ニオウさんの頭を撫で、お会計をする。
柳さんはやれやれと呆れながらいちごみるく味の飴をくれました。
帰り道、飴を舐めると、なんだか甘くて、脳味噌まで溶かされていきそうな感覚に陥った。