長い話

□story6
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「…ニオウ、さん」

「い、らっしゃい、ませナリ」

あんなことがあってから、数日後。
私はまたバーに通うようになりました。
…ニオウさんとは少しぎこちないですが。

「良かったら、柳生さんに新しい商品飲んでほしいぜよ」

「ほんとですか?ならお願いします。」

ニオウさんがまたカウンターでお酒を作る。
その姿が、いつも綺麗で。
いつの間にか、見とれてしまっている自分がいた。
するとニオウさんもこっちを見つめていた。
そして、

「…あんまり、見ないでほしいぜよ。
恥ずかしいのぅ…」

そう言って俯いた。
その反応が可愛くて私は顔を覆った。
だいたい、ニオウさんの気持ちもまだちゃんと聞いてないのに何度キスしたか…
そーゆーのは、ちゃんとお付き合いしてからでないと…!
というか、男同士で不毛ですよね…。
でも、不思議とニオウさんは全然嫌じゃないんです。
むしろ、ニオウさん以外は嫌なんです。

「出来たぜよ。」

ふと声をかけられ、少し上を向く。
すると唇に注がれたゴールドの液体。
あぁ、これが新しい商品か。
と思った頃にはもう喉元を過ぎていて。
こくんっ、と小さく音が鳴った。

「…美味しい…」

私は、まるで独り言のように呟いた。
ニオウさんはにこにこと笑うと、こう言った。

「これ、俺が一人で考えたんじゃよ。柳生さんのことを想って。
…柳生さん、付き合ってくれんかの?」

なんだか最高にニオウさんがかっこよかった。
いいとこ取りというか、なんというか。
でも、私も言いたいことは同じだった。

「こちらこそ、よろしくお願いします。
…ニオウさん」

ゴールドの液体をまだ少し口に含んだまま私はまたキスをした。
そのキスは、なんだか苦い、大人の味がした。





「…柳生さんの下の名前、何て言うんじゃ?」

「柳生、比呂士と申します。」 

「…比呂士」

「どうしました?ニオウさん」

「なんだか、照れるのぅ…」

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