長い話
□story2
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それから、私達はよく店で話すようになった。
仕事の愚痴や、今恋人がいるかだとか、以前何をしていただとか。
ニオウさんの巧みな話術のせいでなんだか私ばかり話した気がしてならないが、まぁ、気にしないでおこう。
ニオウさんは、ここで働くまではホスト→無職→ホスト→風俗となんだか波乱な人生を歩んでいるみたいだった。
本人曰わく、親が仕事のことでうるさいからあまり家に帰りたくないから夜仕事が多いらしい。
あと、ニオウさんは言っていた。
『俺、一度も恋したことないから恋してみたい』と。
なんだかニオウさんならモテるだろうに、勿体無いと思った。
まぁ恋愛も人の好きずきだから私は何も言えないのだが。
「こんにちは、ニオウさんはいますか」
「すっかりニオウの客だな。」
「いえ、そんなつもりは」
いけない。私はなにしてんだか。
まるで、これじゃニオウさんに会いに行くためにここに来てるみたいだ…
まぁニオウさんがここに入ってからかなり出費がかさんでるけど…
「あ、柳生さん!いらっしゃいませナリ」
しかも、来る度こんなに笑顔だと、また来たくなってしまうのも頷ける。
「こんばんは、ニオウさん。
また、来ちゃいました」
「毎日来てくれると俺も嬉しいぜよ。
柳生さんと一緒にいるのは楽しいからのぅ」
その言葉が、何より嬉しかった。
男相手なのに、なに考えてんだとかちょっと思ったが気にしないでおこう。
「じゃあ、今日は…またカクテルで」
「分かったナリ。また腕によりをかけて作るぜよ」
もちろんだが、その後いただいたカクテルはとっても美味しかった。