テニスの王子様

□やさしさの延長線
1ページ/4ページ

俺は、ストーカーに悩まされている。
と、言うのもなんだが、まぁ簡単に言うと困っている。
そいつは、俺の後輩の中の誰かということだけは分かってる。
全く、男を付け狙うなんてヤな奴だな。
俺は指に髪の毛を巻き付けながら女子からもらったポッキーを口に含む。
はたから見たら、まるで俺が女子みたいだった。
んで、まぁ。
そいつ、おかしいんだよな。
例えば、ロッカーからなんか私物がなくなってたり、帰り道に視線感じたり。
あ、人と一緒に帰るとストーカーはいねぇけどさ。
もうそんなことが2ヶ月も続いて、怖いっつーか…なんか腹立つんだよな。
言いたいことあんならはっきり言えっつーの。
…みたいな感じで、俺は困っていた。

「なぁ、赤也。今日も一緒に帰ろうぜ?」

「ぁ、すんません!今日補習で…」

「…ん、了解。頑張れよー」

手を小さく振ると2年の教室を去る。
今日は、帰る相手が誰も見つからない。
たまにこんな状況があるからいやなんだよなぁ…
仕方ねぇか。
俺はがっくりとうなだれた後、さっさと帰る用意をした。




俺が一歩歩けば、そいつも一歩歩く。
なんで大体俺なのか。
俺は男であって、男に付け回される趣味も性癖もないのだが。
そいつの行動に、イライラが増した。
そして、かっとなってストーカーのいる電信柱へ早歩きで行く。

「おいてめぇ!さっきから人のことつけ回してただで済むと思って…」

言葉が途切れる。
そこには、きょとんとした顔の赤也がいた。
まさか、ストーカーって赤也だったのか?
あんなに可愛がった後輩がストーカーだったなんて…
俺は信じたくなかった。

「どうしたんすか、先輩。
俺、補習終わったんで先輩驚かせようとしてたんすけど…バレちゃいましたか」

赤也は無垢に笑う。
その笑顔にホッとし、俺も笑った。

「んだよ、紛らわしいことすんなよ」

そして、俺達は一緒に帰った。
赤也が来て、ストーカーはその日は現れなかった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ