テニスの王子様

□色、イロいろ。
1ページ/2ページ

赤也を殺した。

殺した?殺した。

でも、人が流すはずの血は赤いのに、黒い何かが流れ出した。

真っ黒で、どろどろしてて、アツイモノ。

赤也を刺したはずのナイフも真っ黒に染まっていた。












昔から俺の世界の色はおかしかった。
りんごが黒かったり、黒板の赤いチョークの文字が青色に見えたり。
気になんてしていなかった。
赤也に告白した時も、それを受け入れてもらえた。
でもね、ある日。

赤也が黒く見えたんだ。
怖くて、痛くて。
俺はこの目を呪ったよ。
しかも、赤也が真っ黒になると、俺に乱暴するんだ。
身体もココロも痛くて、涙が溢れた。
真っ黒な赤也なんて、見えなくていいって。
心の底から、叫んでた。

そして、赤也は俺を襲うようになった。
真っ黒な人間に上に乗られて、攻められるのは怖かった。
痛いって言ってもやめてくれなくて。
真っ黒な人間から赤い液体が飛び出したとき、俺は悟った。
全部、俺の目のせいだ、と。
目が赤也を黒く映し出すから、俺は赤也を恐れるんだ。
こんな目、なくなればいい。
そう思って今度はナイフで目を抉ろうとした。
そしたら、赤也に本気で怒られた。
でも俺には。真っ黒な物体にしか見えなくて。

「いやだ…っ、赤也!離せよっ!」

「嫌っすよ…!なにしてんすか、ナイフを離してくださいって!」

ぐさっ

…終わった。
この世界の、全てが終わった気がした。
赤也は、地面に倒れた。
いつもの赤也に戻る。
でも、真っ黒な液体が、俺の身体に染み付く。
鉄分の匂いがした。
きっと、これは赤也の血だった。

「あ、あああ゛っ、ぁあ゛っ…!」

赤也を、俺が殺した。











…血は、赤いんだよな?
でも、ここに溢れているのは黒。
何度、赤也を切っても。
何度、赤也の中身を抉っても。
黒しか溢れてこない。

そうだ、これは血じゃない。
血は、赤いんだ。
黒い血なんて有り得ない。
赤也は死んでないんだ。

「ねぇ、赤也。もう死んだフリはいいから起きていいよ?
ごめんね、俺取り乱しちゃって。
もう目を抉るなんて言わないから。
…なぁ、起きてよ。
ほんと、赤也は死んだフリが上手いよな。でももう嘘つかなくていいよ。
…起きろよ。
もういい、もういいから…!
赤也、起きて。
起きてくれないと、泣いちゃうよ…っ。
赤也ぁっ…」

分かってる。
でもね、認めたくないんだ。
赤也が、死んだ、なんて。
俺がバラバラにした赤也を抱き締める。
内臓が飛び出て、ぐちゃぐちゃで、赤也なんて分からないくらいなのに。
こんなに、真っ黒なのに。

「赤也ぁ…赤也っ…」

こんなに、愛してるのに。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ