テニスの王子様
□灰白色色の空
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お前がいなくなってから。
空は、常に灰色に濁っていて。
心の中にぽっかり空いた穴は、君を求めていて。
俺は______________。
今日も、君を探す。
「ねぇ仁王、塩胡椒とって」
「ほい。その代わり醤油とってくれ」
「はい、どうぞ」
「さんきゅー幸村」
もくもくとただ日常を繰り返す。
一年半過ぎた今でも、それは変わらない。
丸井ブン太がいなくなって、から。
もう、一年半。
俺は無事高校で普通に生活していた。
たまにサボって、そこそこ遊んで。
勉強はテキトーにこなして。
昼飯はクラスが一緒の幸村といつも学食を食べて。
幸せ、なのに。
ブンちゃんがいない。
それだけで、俺の世界に、色がつかなくて。
俺は、ブンちゃんが好きだ。
実際、告白してOKを貰った時は今までにないくらい嬉しかった。
もちろん、キスもしたし、それ以上のこともした。
俺は、幸せだった。
だった…のに…。
ある日、ブンちゃんはいなくなった。
俺がブンちゃんを部室で抱き締めた、あの日。
部活も終わり、『チビ達が待っているから』と急ぎ足でブンちゃんは帰ってった。
家まで送ると言ったのだが、大丈夫大丈夫と手を振られて、仕方ない、と溜め息をつき、俺は素直に手を振り返した。
だが、それが間違いだった。
その帰りに、何者かに誘拐されたから。
誘拐と決まった訳じゃないけど、俺はそう思っている。
あんなに早く帰りたがっていたブンちゃんが一人でどこかに行ったとは考えにくい。
誘拐しか考えられない。
でも誰がそんなこと…。
今考えるだけでも恐ろしかった。
「ねぇ、仁王。赤也最近どーしてるんだろ」
幸村が目を伏せながら聞いてきた。
「さぁな」
なんてことないように返す。
赤也か。
きっと、どこかでテニスでもしてるんじゃないのか。
「…本当に、何してるんだよ、赤也」
幸村は歯を噛み締めて、呟いた。
その異様な光景に、俺には幸村が何か知っているように見えて、仕方なかった。