テニスの王子様

□あほはお前や
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「…謙也さん」

太陽の下、きらきらとブリーチで染め上げた金髪が揺れる。
それは、まるで俺が太陽やと言わんばかりで、何よりも、愛しかった。

「お、財前!はよ来いや。ダブルスの練習すんで!」

日陰にいた俺に気付き、その太陽みたいな笑みを浮かべながら走ってくるスピードスター。
その笑顔は、俺にはちょっと眩しすぎた。

「…しゃーないから、また謙也さんと組んであげますわ」

いつもみたいに憎まれ口を叩くと謙也は少し頬を膨らませながら、

「素直やないなぁ。財前は。」

と言われてしまった。
謙也さんの言ってることは実に的を得ている。
でも、それを鈍感な謙也さんに指摘されたんがなにより悔しくて、謙也さんを睨む。
すると謙也さんはまるで可笑しなことがあったかのようにげらげらと笑い飛ばしながら、俺の背中を叩いた。

「ほんっま、可愛くない後輩やわ」

「…痛い、っすわ」

じんじんと鈍い痛みが走る。
謙也さんは不器用だと言うことが一目で分かった。

「…はよ練習しましょ。時間もったいないっすわ」

「なにぃっ!?…まぁええわ。これが財前の可愛いとこやからなぁ」

しかも、謙也さんは。

「っ…」

天然タラシやし。

頬が熱くなるのが分かる。
隠したくてもここで隠したらそれこそ謙也さんの思う壺や。
謙也さんは満足そうにニヤニヤしながら、俺の顔を覗き込む。

「財前、顔赤いで?どないしたん?」

…訂正するわ。
天然やなかった、ただのタラシや。

謙也さんの顔が直視出来んくて。
必死で言い訳を考える。
そして、一つ思いついた。

「け、謙也さんがあほやから、笑い堪えるのに必死なんすわ」

そう言うと謙也さんはまた爆笑しだして、俺はなんだか恥ずかしかった。

「財前…全く、あほはお前や」

突然笑いが止まり、真面目な顔したと思たらこれ。
真顔で何言っとんねん。

「あほな子程、可愛いっちゅー話や」

そして。
視界が謙也さんで埋まった。
一瞬何が起きたか分からんくて、目を見開く。

「よっし、財前。そろそろ練習行かんと白石にどやされるわ」

謙也さんが少し赤くなった顔を隠すようにそっぽ向きながら言うから。
俺は、この赤い顔も、この動悸の速さも。

全部、太陽のような謙也さんのせいにした。
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