テニスの王子様

□雨の表情
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さぁっ、さぁっ。

雨が、降り続く。

やがて、その雨は。
 

俺の頬を濡らした。








俺、丸井ブン太は、雨の日は必ず貧血になるという面倒で、気持ち悪い体質を持っていました。
特に、雨の日のだだ混みの電車は特に貧血が酷くなりました。
俺自身は、慣れていたのですが、極力誰にも言いたくありませんでした。
その頃の俺は、早く中学を卒業したくて仕方ありませんでした。
確か、中2の頃です。

ある日、俺はまた電車に乗りました。
その日は朝からすごい雨で、何故警報が出ないのか不思議な位でした。
当たり前だけど電車はだだ混みでした。
しかも、座る座席が優先席しか空いていませんでした。
流石にそんなみっともないことをしてまで座るくらいなら、いっそのこと電車の中で朝飯を吐いた方がマシだと思った俺は、気分が悪いのに頑なに人混みに揉まれながら立っていました。
すると、入れ替わりの激しい車両に雨の匂いがつん、としました。
途端に、俺は膝から崩れました。
吊革を掴んでいたので倒れはしなかったのですが、力を抜けば今にも倒れてしまいそうでした。
その間にも人混みは数を増やしていきます。
人が揉まれて、くっ付いて発生する汗の匂い。
アスファルトの地面に染み込んで、漂ってくる雨の匂い。
女の乗客の香水やフレグランスの匂い、男の乗客の洗剤の匂いがいつもより敏感に感じて、余計に俺を気持ち悪くさせました。
早く学校の最寄り駅へ着いてくれ…!
俺はそう願うしかなかったのです。
だけども、願っても電車の速度はいつもと同じです。
ついに我慢の限界で、俺は車内でうずくまってしまいました。
車内の視線が俺に浴びせかけられます。
その視線でさえ、俺には気持ち悪いものでした。
もう、ダメだ。
半ば諦め気味に、口元に手を置いて理性を飛ばしかけた時______。
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