テニスの王子様

□自傷症。
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今なら。
今なら言えそうな気がする。

意を決して、息を吐いた。

「俺、も…赤也が、好き…っ」

赤也の反応がなんだか怖かった。
ぎゅっと目を瞑った。
視界が黒に染まる。

「…まじ、っすか」

赤也の拍子抜けた声が耳元で響き、恥ずかしさにうつむきながら首を縦に振る。

「…嬉しい、丸井先輩…!」

赤也は俺を抱き締めた。
優しく、強く、温かく。
引っ込んだ筈の涙がまた頬を伝い、地面に落ちた。
ほんとうに、壊れてしまいそうだ。

「俺も、ずぅっと前から好きだったっす。

…だから、その傷のワケ、教えてくんないっすか?」

赤也の真剣な眼差しが俺を捉える。
逃れることは許さない。
これは命令だ。
とでも言ってるような剣幕だった。
観念した、と頭を垂れ、ぽつりぽつりとことのあらましを話す。

その言葉を、赤也は最後までちゃんと聞いてくれた。








「…つまり、俺のせいで丸井先輩の傷は治んないっすか?」

「…そーゆー、訳じゃ…」

まぁそうなのだが肯定もしにくい。
かと言って否定もしにくいが。

「じゃ、俺の責任っすね。


責任は、その傷が治るまでとりますよ?」

え…。
その言葉は、いろいろと勘違いしてしまいそうになる。
責任、なんていうのは、結婚だとか、そーゆーのに使う言葉じゃ…。

「…俺の、傷、一生治んないかも」

「じゃあ一生一緒にいますよ。
俺のせいなんですし」

なんかそれじゃ重い枷を赤也にしてるみたいじゃんか…!
そんなの、俺、やだよ。
きっ、と赤也を睨む。
そして、

「そんな、重いもん持たせられるか!」

と叫んだ。

すると、赤也は。
顔を赤くし、頭をぽりぽりと数回掻いた後こう言った。

「…このニブチンめ。
…俺が一緒にいたいんだから、ずっといてくれないと困るつーか…

ああもう、…っ、俺と、一生一緒にいてください!

怪我とか、関係なく!」

まるでそれはプロポーズみたいで。

「…あったりめぇだろぃ?

もう離さねぇよ」

そう笑顔で言った後、俺等は優しいキスをした。
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