長い話
□story4
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「もーっ、ニオウったらぁ♪相変わらずかっこいいのね」
今、私はまたバーにいます。
でも確かに、今までと違う状況が広がっています。
そう、女の人とニオウさんが話しているのです。
しかも、親しげに。
そうなると私はニオウさんには近づけません。
ちらりと横目で伺ってくれてるニオウさんには悪いですが、今日はここで帰りましょうかね。
そう思い、立ち上がった時だった。
「ねぇニオウ〜…アタシ…今日、ニオウの家泊まりたいなぁ♪」
およそ聞き捨てならぬ言葉が聞こえた。
「ほらぁ、うち親遅いしぃ…久しぶりに、ニオウに慰めてほしいな?
身体も…心も…」
何故か、耐えられなかった。
苦しくて、まるで毒でも盛られた気分だった。
「…いいのか、ニオウのことは」
マスターの柳さんにまで心配をかけてしまっている…。
私はそんなに顔に出やすいのだろうか。
「…はい、とても、美味しかったです」
私は、行き場にないもやもやを抱えたまま、店を後にした。
「…っ、や、ぎゅ…さん!」
その時だった。
ニオウさんの、必死な声が聞こえたのは。
ニオウさんは私を見つめながら一目散に走ってきた。
そして、私に抱き付いた。
「っわ…」
思ったよりも軽く、そして思ったよりも程よく筋肉がついていた。
私の頬が熱くなる。
「さっき、のは違うんじゃ…
あいつは、前の仕事の常連客で…
俺は、あいつに手なんか出したことなか。
信じてよっ、柳生さん…っ」
ニオウさんは、泣いていた。
私には何故だか分からなかった。
だけど、胸の中に溜まっていてもやもやがすっきりした気がした。
「…大丈夫ですよ、ニオウさん。
私は何も気にしてないですから。」
そう言うとニオウさんは嬉しそうに微笑んだ。
その笑顔が、あんまりにも可愛いから______________。
私は。
「…っ」
思わず、ニオウさんの唇を貪っていた。
ちゅっ、ちゅく、と絡み合い、熱い吐息が漏れる。
ニオウさんは今にも泣きそうな顔で荒い息を零していた。
思考が上手く働かない。
きっと、こんな熱いキスのせいだろう。
そのまま、私はニオウさんの身体に触れ______________。
「っ、ひぁ…っ」
その時、ニオウさんの喘ぎ声を耳が捉えた。
そこで、我に返った。
私は、いったい、何を。
男が、男に触れるだなんて。
自分が自分で分からなかった。
「や、ぎゅ…」
ニオウさんのとろんとした表情を見てまた理性が吹っ飛びかけたがなんとか保つ。
そして、身体を離した。
「…すみ、ません。」
そう言うと足早に立ち去った。
ニオウさんは、私を見つめて泣いていた。