BL
□April fool
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「何?小田桐。俺はただゴミを…」
振り返りもしず、冷たい声でそう言うあさとの言葉を遮り、僕は口づけた。
「小田…」
「嫌だッ!嫌なんだ…ッ、女の子と、付き合ってもいいなんて、嘘だ。どこにも、行くな…ッ。お前は、僕の恋人だろう!?」
情けなく、ボロボロと涙をこぼしながらもあさとの目を見つめ、強く叫ぶ。
自分勝手だって、ただのワガママだって、わかってる。
あさとのコトを考えたら、離れたほうがいいってコトも、わかってる。
それでも……
「一緒に、いたいんだ…ッ」
ぎゅう、とあさとの洋服が皺になるくらい強く掴み、みっともなく泣いた。
それを見て唖然としていたあさとだったが呆れや切なさ、それに沢山の嬉しさを含めたような表情で笑うと、僕を抱きしめた。
「馬鹿だなぁ、小田桐は。…俺が君を手放すわけないだろう?知らないのかい?……今日はエイプリルフールだよ」
くすっと笑って僕の涙を指でそっと拭うとそう囁いた。
「エイプリル、フール…?」
言われてみれば、今日は4月1日。
ってコトは……
「今までの、全部嘘ってコトか!?」
「あはは、まぁそうなるね。可愛かったなさっきの小田桐。まさか、エイプリルフールに気付かないとは思わなかったよ」
愉しそうにそう言うあさとに、僕は恥ずかしすぎて何も言えなくなった。
「こんなくだらない日なんて、って思ってたケド、意外といいもんだね。小田桐からのキスも貰えたし、嫉妬もしてもらえた。嫉妬した小田桐が、大胆だってコトもわかったしね」
嬉しそうに、意地悪な顔で歌うように囁くあさと。
「お前…ッ、絶対許さないからなッ!」
怒りと恥ずかしさで赤く染まった顔でそう怒鳴ると、あさとは愉快そうに、狐みたいな顔で笑って、僕の唇を奪っていった。
もう二度と、あさとの言葉なんて信じるものかッ!
end