捧げ物です!
□絆される
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遠くで、水音が聞こえる。
多分、雄介がシャワーを浴びている音だろう。
緩やかに覚醒していく意識の中でそんなコトを考えていた。
「ん…、」
ぼんやりと目を開け、未だに見慣れない天井を眺める。
喉の渇きを感じ、起き上がろうとするも腰が痛くて動くのも憂鬱だ。
だが、体はベタベタしていない。
雄介が寝ている間に清めてくれたのであろう。
布団を軽くめくり、見てみるとわざとなのかなんなのか服は下半身しか履かされてなかった。
「あ、小田桐さん起きたんすかー」
シャワーから出てきた雄介が、上半身裸で髪から水を滴らせてそう言う。
僕が寝ているベッドに腰掛けて、覗き込むように僕を伺う。
「んーやっぱり腰痛いですよね」
「あぁ、まぁな。雄介が僕を風呂に入れてくれたんだよな?すまない、ありがとう」
腰は痛いが、体が昨日のままだったらもっと不快だっただろう。
シーツも、知らない間に新しいのと交換されているようだし。
「あーはい。大変だったんですよ?数回イっただけで毎回小田桐さん、意識飛ばしちゃうから理性との戦いでしたよー」
半分ため息を吐くように、そう呟く雄介に僕は言葉に詰まる。
雄介の家でこういうコトをするようになって、まぁまぁ歳月はたっているというのに僕は毎回意識を飛ばしてしまう。
………雄介が激しすぎるのも、原因の一つだとは思うが。
「小田桐さん、昨日あんだけ喘ぎましたから喉乾いてますよね?ちょっと待っててください水持ってきますー」
恥ずかしいセリフを言いながら、冷蔵庫まで水を取りに行ってくれる。
雄介はなんだかんだで細かな気配りができるやつなんだと最近わかった。
「はい、お水ですって小田桐さん起き上がれないんでしたね」
どうすっかなー、と呟いて少し考えると急に水を自分で飲み始めた。
「おい雄介。お前が飲んでどうす…ッ、んんぅッ」
文句を言おうとした口を雄介の口で、ふさがれた。
そのまま何かを流し込まれ、ごくりと飲み込む。
それが水だとわかり、雄介が自分で口に含んだ理由がわかった。
「ん、んん…ふ、う…」
雄介の口の中の水を全部飲みきり、名残惜しげに唇が離される。
飲みきれなかった水が唇を伝う。
それをぺろりと舌で舐めとられ、雄介は愛おしげに僕の髪を梳く。
「小田桐さん、無理されてすいません。でも本当に…………愛してますよ」
少し乱れた布団の隙間から見える、僕の体につけられた赤い痕を撫でながらそう囁く雄介。
「…………馬鹿やろう。僕だって、好きでもない奴とこんなコトはしない」
雄介の首に手を回し、軽く自分の方へ引いてキスをした。
雄介は驚いた顔をしたが、すぐに頬を緩め僕の頭を支え深くキスを再開した。
「小田桐、さん……」
――こんな俺を愛してくれてありがとう。
小さく小さく、唇だけでそう囁くと、雄介はまた口付けを続けた。
―それはこっちのセリフだ、馬鹿。―
end