BL

□流される
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僕が、席を外したのはそんなに長い時間ではなかったと思う。
暇を持て余した雄介と、繭墨のところへ行って、飲み物が切れたから買ってくるためにスーパーに行った。
僕がいなかった間に、一体何があった?

「おい、雄介!?」

僕の目の前には真っ赤な顔で焦点のあってない、明らかに異常な雄介の姿があった。

「はれー?小田桐さん?お帰んなさいー」

微妙に呂律も危うく、ふにゃふにゃと笑っている。
その手には、ビンが握られていた。

「繭さんッ!これは一体ッ!?」

ソファーで何事もないかのように寛ぐ繭墨は愉快そうに唇を歪めた。

「いやね?雄介君が、喉が渇いたとうるさくてね。小田桐君が買ってくるまで待てなそうだったから、貰い物のいらない飲み物を出してあげたんだよ」

くつりと笑って人形の形をしたチョコレートを噛み折る。
貰い物の飲み物なんて、この家にあったのだろうか。
僕は雄介の持っているビンを見た。

「…ッ、お前、これ酒じゃないか!」

英語でかかれたラベルの酒は高級そうで、とてもじゃないが僕には買えない。
本当に貰い物で、いらなかったから繭墨が手渡したのだろう。

「へー、そうなんですかー。俺、酒はそこそこ強いほうなんすけどねー」

おかしいなー、と危うい話し方でへらへらと笑う。

「そりゃそうだよ。それは、とびきり強い酒だと言っていたからね」

「それをなんで雄介に渡したんですかッ!雄介は未成年ですよ!?」

だいたい、チョコレート以外口にしない繭墨に、酒を、それも強いものを渡したやつは一体誰だッ!!

「んー、小田桐さんも飲みましょうよー。これ、なかなかイケますよ?」

そう言って、またぐいと酒を煽る。

「ちょッ、雄介!やめろ!飲むなッ」

僕は慌ててビンを奪おうと手をのばす。
だが、惜しくも僕の手は宙をかき、逆に雄介に掴まれた。

「おい雄介、本当に…、ん!?」

掴まれた手を引かれ、腰をとられたと思った瞬間に唇がくっついていた。
なにかが雄介の口から流し込まれ、僕はなすすべなくそれを飲み込んでしまう。
かあっと、喉が焼けるように熱い。

「ん、んんッ!ふ、あッ」

たった一口飲んだだけなのに、身体が異様に暑くなる。
アルコール濃度は一体いくつなのだろうかわからないが、普通じゃない。
自称酒に強い雄介が酔うのも当たり前だ。

「んッ、雄介、もう、やめ…ッ」

一口だけでもキツいのに、雄介は次から次へと僕に流し込む。
嫌だと顔を背けるも、がっちりと掴まれた腰によって逃げられない。
だんだん立っているのも辛くなってきた。

「んッ、はあ…ッ!雄、介…!」

「…スッゴいエロい顔してますよ小田桐さん?誘ってます?」

それはお前だ、馬鹿。と言ってやりたいくらい雄介だってエロかった。
今はもう、ただ身体が熱くて、自分の力じゃもう立っていられない。
ぐたりと雄介にもたれ掛かる形だ。

「はー…。もうダメだ。理性もたねぇ。小田桐さん、」

――壊しちまったら、すいません。

雄介はそう囁くと、僕を床に押し倒した。
床の冷たさに少し気分がよくなる。
床でヤったら、痛いだろうが。
がっつきすぎだ、馬鹿。
そう言ってやりたかったが、僕も酒のせいでどこかおかしかったんだろう。
もやがかかったような思考では抵抗する気にもなれず、むしろ少し望んでいたようなそんな気分になった瞬間、視線が合った。
僕の思考が一瞬でクリアになる。
覆い被さる金髪の、後ろ。
――繭墨と、目があった。

「ゆ、ゆゆゆ雄介ッッ!!やめろ!とまれちょっとッ!」

慌てて雄介の肩を押し止める。
雄介は不満げに顔をあげた。

「繭さんが、見てる!!」

僕が、酒のせいで赤くなっていた顔をさらに赤く染めて叫ぶと、雄介は何でもないかのような顔をした。

「はぁ。それが何か?」

「小田桐君、ボクのことは気にしなくていいよ。だいたい、今更だしね。君たちのバカップルっぷりは散々見せつけられてる。何を今更恥じることがあるんだい?」

さも当然のように言っているが、僕は断じて繭墨の前で雄介といちゃついた覚えはない。
それに、万が一そうだとしても、それとこれとは話が別だ。

「ほら、繭墨さんもいいって言ってますし続けますよー」

「馬鹿!繭さんがよくても、僕は…ひッ」

ちゅう、と首筋に強く吸い付かれ声をあげてしまう。
ばっと口を塞ぐも、しっかり聞こえていたようで繭墨がニヤニヤしているのが視界の先で見えた。
雄介を突き飛ばしたくとも、元々の力の差もあるし、なにより酒のせいで力が思うように入らない。
身体が熱くて、全部が熱くて、もうどうでもいいような気分になる。
ただ、雄介の温度だけ感じたい。

「んッ…ゆう、すけぇ…ッ!もっと、ちゃんと…触って…ッ」

焦れったい愛撫にもどかしくなり、雄介の首に手を回し懇願する。
すると、何を思ったのかしばらく動きをやめたかと思うと僕を抱き上げた。

「すいません、繭墨さん。やっぱり俺、小田桐さんのこんな姿、例え繭墨さんでもみしたくありませんわー。俺だけが知ってる秘密、ですから」

「そうかい。まぁボクは構わないよ。ただ明日の仕事に支障がないように…って言っても無理に決まっているだろうがね」

呆れたような表情でひらひらと手をかざして帰宅を促す繭墨。
雄介もそれに苦笑いで答え、僕を抱いて出て行った。
この後、僕は散々雄介の家で鳴かされるのだが記憶がところどころ飛んでいて、あまり覚えていないのであった。


「あーあー、酔っ払った小田桐さん、めちゃくちゃ素直で淫乱だったんですねー。俺以外の前で酒飲むの、禁止です」

「理不尽だッ!?」


end
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