BL
□どうしても
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※あさおだ←雄介です
僕の意識が浮上したのは夜中だった。
正確な時間はわからない。
ただ、あたりが暗いから、多分まだ夜なんだろう。
僕は起き上がろう、として失敗する。
痛い。鈍く、痛む。
それでも、僕は必死に腕に力を入れて、立ち上がろうとする。
「逃がしませんよ、小田桐サン?」
びくっと肩が震え、力が抜ける。
恐る恐る声のほうを見ると、暗闇の中ゆらりと立つ雄介が見えた。
「雄、介……」
僕は顔を見せないために、入らない力を振り絞りベッドにうつ伏せになるよう動く。
枕に顔をうずめ、唇を噛み締めて。
「あー、やっぱり声枯れてますねー。まぁ当然か。あんだけ鳴かせたら、ね」
ギシッと音をたてベッドに座り込む。
それだけで、僕の身体が強張るのがわかった。
「あれ?もしかしなくとも、俺に怯えてます?小田桐さん?」
さらっと僕の髪を撫でながら、なんでもないように聞く。
僕は、答えない。
「まぁ、普通はそうですよねー。なにせ、あさとさんと付き合ってる小田桐さんを、無理やり犯したんですから」
あさと、と雄介の唇が発音した瞬間僕はもう出ないと思っていた涙が流れ出したのを感じた。
「あさとさん大好きな小田桐さんは、酷いことに俺とヤってる最中でさえ、あさとさんの名前呼んでましたもんねー」
思い出したくもない、つい先ほどまでの出来事が頭の中を駆け巡る。
『いゃ、嫌だ、やめ…ッ、雄介…ッ!』
必死に拒絶し、暴れたのにまったくかなわなかった。
『あさ、とッ、あさと!あさと…ッ』
貫かれた瞬間も、愛撫されてる時も、狂ったように呼び続けた名前。
シーツを握りしめ、バックからだったので雄介の顔は見えなかった。
だからこそ、僕はあさとの名前を呼び続けた。
「本当に小田桐さんはあさとさんが好きなんですねー。さて、でも小田桐さん?好きでもない俺に抱かれた身体で、あさとさんに会うことはできるんですか?」
ちゅ、と耳元に落とされたキスと共に囁かれる残酷な言葉。
中途半端に脱がされたままだった、シャツ一枚しか羽織っていない身体を守るように自分で抱く。
「確か、あさとさんとはまだヤってないんでしたよねー?どうです?初めてを他の男に奪われた気分は?」
「最悪、だッ…!」
僕はそこで初めて口を開く。
悔しさから涙が溢れる。
耳や首にキスをする雄介を拒絶するように嫌々と首を振る。
「いやー、でも感じてたじゃないですか?好きでもないやつに、触られて?」
つつ、とシャツ越しに僕の背中に触れる。
「ひッ、う…!違う、違う…ッ」
雄介の声が聞こえないように、両手で耳を塞ぎ、ぶんぶんと首を振る。
えー?ととぼけた声をあげながら、雄介が布団をはいだ。
「なら、もっかい試します?」
残酷なまでに、雄介の声は塞いだはずの僕の耳に届いた。