BL
□お願い
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「にゃあって、言ってください」
「は?」
昨日の真夜中、やっと女王からのお願い、をやり終えた僕らは酷く疲れていた。
ベッドに沈み込み、お休みの言葉もなく眠るくらいには身も心も疲れ切っていた。
だから、今日の目覚めは悪い。
まだ、寝ていたい。
覚醒しきっていない頭では、セバスチャンが真顔で言い切った言葉の意味が、まったく理解できなかった。
というか、理解したくない。
「……念の為もう一度聞く。僕の聞き間違いだよな?ちょっと疲れていて、思考が正常に働いていないんだ、だから…」
「いいえ。聞き間違いではありませんよ。にゃあ、って鳴いて欲しいんです」
あぁ、ダメだ、こいつ壊れている。
さすがの悪魔でも、昨日までの激務は疲れたのだろうか?
だから、こんな、変なコトを?
「坊ちゃん、さぁ鳴いて…」
「鳴くかっ!!なんなんだお前は!ふざけたコト言ってないでさっさと朝の紅茶を寄越せ!」
台にのせたままの紅茶に向かって手のひらをかざす。
だがセバスチャンは一向に紅茶を渡そうとはせず、僕を見る。
「まだ、お預けです。本日は坊ちゃんが鳴いてくださるまでおやつも紅茶も抜きですよ?昨日まで頑張ってらしたので、朝ですがせっかく用意したおやつもナシです」
ちらっと台を見ると紅茶と共にマカロンやマシュマロなどが乗ったトレーがあった。
ただでさえ、最近忙しくてまともにおやつを食べれていないのに、これ以上抜くなんて考えられない。
「お前、なんで…」
「さすがに私でも、疲れるんです。なので坊ちゃんから下僕にご褒美が欲しいんですあんなに、頑張ったんですよ?」
第一、そのせいであまり彼女に構ってあげられませんでしたし。とボソッと呟く。
お前、絶対それが本音だろう。
だが、確かに無茶な働きを強いたのは事実だ。
これが人間なら確実に問題になるレベルではこき使った。
だから、まぁ、それくらいなら。
「かがめ、セバスチャン」
ちょいちょい、と手で呼びセバスチャンが床に膝をつき、跪いたのを確認してネクタイを引いた。
「―――にゃあ」
耳に唇を寄せ、たった一言、囁くような小さい声で鳴いた。
だが、それでもちゃんとセバスチャンには聞こえていたようで、ちょっと驚いたような顔をしている。
「…ふん、言ってやったぞ。さぁさっさとそのおやつと紅茶を寄越せ」
セバスチャンから離れ、ベッドの上で足を組み直し手をひらひらさせる。
セバスチャンは口元を緩めた。
「―イエス、マイロード」
そして、またいつも通りの日常が始まる。
end