BL
□甘いんだよ
1ページ/2ページ
「522番、飯の時間だ」
がしゃん、と鉄格子の隙間からトレーにのったご飯をおろす。
囚人番号522番。
最近、ここの牢屋に入った囚人でちょっと変わったやつだ。
明るい金髪に、整った顔。
少し子供っぽいこいつが、一体なにをして捕まったのか僕は知らない。
だが、一人離れた個室、と言っていいのかわからないがとにかく他の囚人とは違う離れにいるくらいだからきっと色々としてきたんだろう。
「あー、またあんたですか」
おかれた飯には目もくれず、ダルそうな目で僕を見る。
「前も言っただろう。僕はお前の担当になったんだ。だから、これからお前に関わるのは僕だ」
僕は牢屋の中に入り、座って僕を見上げる囚人を見た。
ここは、最初に鉄でできた頑丈な扉をこえもう一つ鍵付きの扉を開かないと出れないので、基本看守は囚人の牢屋まで入って話す決まりとなっている。
「えーマジですかぁ。………ま、いっか。じゃあえっと看守さん?名前教えてくださいよー」
一瞬嫌そうな顔をした後、すぐに開き直り寝転がりながら聞いた。
「名前?名前なんてどうでもいいだろう」
「えッ、看守さんマジですかー?これから長い間あんたとしか関われないんでしょ?だったら看守さんとか呼びにくいし」
――ちなみに俺は雄介ね。
馬鹿にしたような目で僕を見て、名前を名乗る。
僕は一瞬答えていいのか迷ったが、名前くらい教えても問題ないだろうと話した。
「小田桐。小田桐、勤だ」
「へー。小田桐サンね」
自分で聞いたくせに、さほど興味もなさげに呟く。
そのまま目を閉じてしまったので、僕は出て行くべきか迷った。
「………522番、飯食べないのか?」
迷った挙げ句、そんなどうでもいいようなコトを聞いていた。
すると、むくっと起き上がり、僕の手をとった。
僕はいきなりの行動に、少し警戒する。
「名前。522番じゃない。雄介、って呼んでくれません?」
手を掴まれたまま、僕を見上げてそう言うやつの顔は真面目で、名前で呼んではいけない決まりなんてないんだから…と僕はそれにオーケーしてしまった。
雄介、と声に出すと嬉しそうに微笑んで腕を放した。
「ん、じゃあまた明日ー?飯は、気がむいたら食べますんでー」
ひらひらと手を振ってまた寝転がる彼は、今度こそ寝る気なのだろう。
僕は、雄介の微笑んだ顔が頭から離れないコトを不思議に思いながら、ゆっくりと牢屋を出て行った。
To be continued....?