BL

□ズルい、
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「―ッ、あ!おし、の…っ、ごめっ、僕が悪かった、から…っやめ…っ」

じわりと目尻に涙が溜まる。
人がこんなにも頼んでいるのに、忍野は決してやめようとしない。

「ひっう…!あ、ん!い、たい…っ」

じわじわと甘い痛みが広がる。
確かに、僕が悪かった。
今日も、軽い怪我をして、でも忍野に会うまでには治りかけで、確かに痛みはあるのだけれども大丈夫だと、言った。
すると忍野は険しい顔をして僕の手首をひき身体を抱きしめると、唯一治るコトがない吸血痕に噛みついた。
血がでるまで強く噛んで、溢れ出る血を舐めとって、治ろうとする傷口を舌でゆるくえぐって、また噛んでの繰り返し。

「あ、あぅ…っ、忍野、おし、の…っ、もう、やめて…っおしの…!」

痛い。
痛いんだが、痛いだけじゃ、ない。
甘く、疼くような快感が広がる。
じわじわと傷口から甘い毒が広がっていくようだ。

「君が悪いんだよ、阿良々木くん」

「ひうっ…!」

やっと傷口から離れたかと思えば、そのまま耳へと唇を近付けて囁かれた。
かぷ、と耳を甘噛みされ、ぞくぞくと背を反らす。

「君の身体は、確かに怪我をしようがすぐに治るだろう。でも、痛いだろう?そんな簡単に怪我をして…」

――君は身体を粗末にしすぎ。

ちゅく、といやらしい音をたて、忍野の舌が僕の耳に入ってくる。

「ふあっ、や、やだ、おし…っ」

「このまま、痛みしか感じられないくらい乱暴にされないと…わからない?」

ぐり、と先ほどまで噛んでいた吸血痕に爪をたてて脅される。
また、じわりと血が滲むのがわかった。

「おし、の…!お前が、僕を、心配してくれてるのは、わかった。僕も勝手だったとは思う。…だけど、な。やっぱり…僕は、目の前で誰かが危ない目にあったなら…怪我をしてでも、助けると思う」

――ごめん、な。

ぎゅう、と抱き締められていた忍野の背中に手を回して、僕は言葉を紡ぐ。
あぁ、僕はこのまま、忍野に殺されるのかな。
吸血鬼の僕は、結構な痛みでも死ねないから殺されるコトはないかな。
忍野なら、僕くらい、簡単に殺せそうだケド。
どれくらい痛くされるのかなぁ…。
痛いのは、そりゃあ、嫌だケド、でも。

「僕は…もし、殺されるなら忍野がいい」

身体の力を抜いて、後はなにしようと忍野の自由だと言うように脱力した。

「――っ、」

忍野は、なぜか一瞬息を詰めた。
身体が強張って、僕がもう一度名前を呼ぼうとした瞬間、唇を奪われた。

「ん!んん…っ」

息ができなくて、視界がぼやける。
あぁ、本当に死ぬかも。
そんなコトがよぎるくらい呼吸ができない長いキスだった。

「んんぅ…っ、はあ、」

やっと離された、そう思った瞬間、忍野は切なそうに眉をひそめた。

「馬鹿だなぁ、阿良々木くんは。自分の痛みは全部無視して、他人を助けるなんて。危なっかしくて、見てられないよ。…でも君なら、僕が何を言おうとも、変わらないんだろうね…。なら、僕が、」

――その分君の痛みを背負うから。

だから心だけ、傷めて泣かないで。といつのように見透かしたような言葉で囁いた。

おかしいなぁ。
僕が、今日、泣いたコトなんて、忍野には言ってなかったはずなのに。

―どうしても適わない―

そのまま僕はゆっくり笑みを浮かべ頷き、忍野が満足げに微笑んだのを見て、意識を失った。

end
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