BL

□恋して愛して
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それは、突然だった。
普段通りの朝だと思っていた。
んん、と伸びをして、起き上がった瞬間にふわりと触れる髪。
そこで、違和感に気付く。
――僕の髪はこんなに長くないはずだが?
じゃあ、今手に触れたのは…?

「…っ!うわあぁあっ!」

バタバタと相当近所迷惑だったであろう音を立てて、鏡を覗きにいく。

――そこには、見知らぬ僕がいた。

腰あたりまで伸びた髪、いつもよりわずかに小さくなった背。
肩幅もだいぶ華奢になっているし、腰もくびれが出来ていて、細い。
それに何といっても胸だ。
女の子はいつもこんな重みを抱えて生活していたのかと、苦痛になるほど肩に負担がかかる大きな胸。
自分で言うのもなんだが、全体的にバランスのよい肉付きでスタイルがいい。

「なんだって、こんな…っ、」

自分で出した声に、驚いた。
普段より高く、自分ではないような声。
とにかく、繭墨の所へ行こう。
自分だけでいたって、混乱しか招かない。
僕は早々に決断すると、まずはこの胸をどうにかしようと周りを見渡した。
僕は当然ながら、男ものの服しか持っていない。
…早い話、こんな大きな胸が入るような服は、持ち合わせていないのだ。
とりあえずは、包帯をさらしのように巻こうと思い立ち、少し躊躇いながらも服を脱ぎ捨てる。
服を脱いだ反動で、ぶるんと揺れる胸が、妙に生々しい。
さっさと巻くか、と背中に手を回したトコでがちゃりと音がした。

「小田桐さんーッ!ちょっと昼飯、付き合ってもらえませんかってえぇーッ!?」

扉を開けたのは、雄介だった。
僕は、背中に手を回したままだったので、その…体は全部、丸見えで。
雄介は叫んだまま固まった。
僕も思考が追い付くまでに十分な時間を要した。

「…ッ、きゃあああーッ!!」

見事、思考が追い付いたトキには女の子のように真っ赤な顔で甲高い悲鳴をあげていた。
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